2015年01月14日

「オリエント急行殺人事件」(TV)感想②

 以下の文章では、テレビドラマ「オリエント急行殺人事件」の内容に触れています(①の続きです)。ご了承ください。

 計画は進むが、なかなか実行できないという焦りも、もちろん描かれている。せっかちを自認する轟公爵夫人も面白い。相談するうちに、なんだかワクワクするような気持ちになったりもする。
 以前、テレビドラマ『私の嫌いな探偵』の感想に、「殺人事件と聞いて喜ぶなんて」と非難めいたコメントを書いた人がいたが、そういう人は今回のドラマもやはり非難するのだろうか? しないとしたら、それはクリスティ×三谷ドラマだから、非難しないのだろうか。
 私は、そういう「計画が形になっていくワクワク感」は描いてもいいと思う。ただ、もっとクスッと笑えるシーンが多いかと思っていたら、予想よりは少なかった。計画を立て、力を発揮する中心である能登大佐・馬場舞子ペアに、そういう場面がないからだと思う(もちろん「復讐の計画は真面目であるべきだ」というのは、まっとうな考えだ)。しかし、この二人は恋に落ちる。正確にはいつ始まったのかわからないのだが、通常と違った状況に置かれたからこそ恋心が募る、というのはあり得ることだ。ただ、この二人はあまりにもそれを見せない。軍人と家庭教師、という立場と時代背景から感情を見せないのであっても、それならそれで、ただ一度の(勝呂も見とがめた)「今はダメよ」にもっと情感が欲しい。その時の、馬場舞子の能登大佐に伸ばした手にもっと色気が欲しい。それとも鈍い私が感じ取れないだけだろうか?
 事件を推進する役でありながら、それを引っかき回す役でもあるのが安藤伯爵夫人。批判されても仕方のない役を楽しそうに見せてしまうのは、それを演じる女優さんが今持つ勢いと魅力のおかげだろう。
 日本ならではの場面かな、と思うのは、第二夜の冒頭に「幸せだった頃」の象徴として描かれるガーデンパーティ。この時代のヨーロッパの貴族の館でなら、使用人が主人と同じテーブルで食事をすることはないだろう。日本の「進んだ」お金持ちの家ならあったかもね、と思う。そしてこの場面の皆が話しているなごやかさは、第一夜の食堂車での、豪華なインテリアの中での、お互いが「他人のふり」をして食事をする場面と対比され、「知らないどうしの一期一会」という列車という特殊な舞台を際立たせてもいる(もちろん、本当は全員顔見知りであるわけだが)。 
 そういう場面構成が上手だと思った。
 終盤に「これで皆バラバラになるんですね」というようなセリフがあって、実際に駅に到着して乗客が去っていくシーンまで見たいような気もしたが、それを見せないのが含みを持たせた終わり方、というものなのだろう。
 さて、玉木くん。終始美しく、伯爵にふさわしい威厳もあって、しかしとにかく妻が愛おしくて仕方がない様子がよく出ていた。個人的に好きなのは、盗み聞きをしてつかまるシーン。よく出かける妻に不審を抱き、後をつけて計画を聞いてしまうというわけだが、両側から男にがっしり腕をつかまれて髪の毛も少し乱れて憔悴して見える(一瞬だけど)表情が色っぽい。他の容疑者の方々はそんなに憔悴して色っぽい表情は見せてくれませんでしたからね。  

Posted by mc1479 at 13:38Comments(0)TrackBack(0)

2015年01月14日

「オリエント急行殺人事件」(TV)感想①

 以下の文章では、テレビドラマ「オリエント急行殺人事件」の内容に触れています。ご了承ください。 

 アガサ・クリスティの有名な原作をもとに、舞台を日本に移して三谷幸喜が脚本を書いたドラマ。しかも第一夜がいわば「実行編」なら、第二夜は、犯人側から見た事件の物語だという。もちろん、第一夜の列車の内装や衣装の華麗さも見たいと思ったが、お話的には第二夜を楽しみにしていた。三谷作品は、時間・空間の限定されたものが面白いので、列車に閉じ込められた人々の話というのは、ぴったりだという気がした。
 私は、玉木宏くんのファンなので、もちろん彼の伯爵に対する期待も大きかった。その点だけで言えば、時間的にはさほど多く出てきてくれなかったのだが、せっかく長時間見たので、ドラマ全体の感想を書いておこう。
 
 第一夜は、かつての映画で誰が演じた役をこのドラマでは誰がやっているのかを楽しんだ人も多いと思う。登場人物名も、ポワロ=勝呂は解説がないと少しわかりにくいが、あとの人物はわりと単純にもじっている。豪華な場面を楽しめるドラマでもある。ただ、原作ではさまざまな国籍の人が乗り合わせるというのも面白いわけだが、日本を舞台に、すべて日本人が演じるという時点で、そういう面白みは消えているのは仕方がない。
 第二夜は、準備にあたる話の中で、どれくらい予想外のことが起こったりするのかと思ったが、発想の始まり・順に誰を引き込んでいくのかが納得のいくように描かれる。面白いのは最初はすべて女性主導だということ。そこへ、実行できる力の持ち主として、男性が迎えられていく。
 悪人・藤堂修に、自分たちの正体がバレたかとはらはらするような場面は、①能登大佐と馬場舞子が横浜新聞の記者と偽って乗り込む場面と、②藤堂の秘書になっている幕内が「裏切り者がいる」と藤堂が言うのを聞いて、自分のことかと怯える場面だろう。①の場面は、新聞社に確認してバレたかと思ったのに、二人が無事に帰れるのが不思議。あとの展開から考えると、二人を見かけた幕内が機転を利かせてごまかしたのかと思うが、肝心の殺人実行の時の幕内の緊張ぶりを見ていると、そこまですばやく機転の利いた行動ができるのかな、と疑問に思う。②の場面は、裏切り者は執事だとわかって、幕内はホッとする。幕内にはもう一つ、藤堂に仕えるのが嫌になって退職しようとするが止められる、という場面もあるので、幕内という役は見せ場に恵まれている。ちなみに、この時、辞めようとする幕内を止めるために、大奥様が、死んだ娘の持ち物だった新訳聖書を幕内に渡すのだが、聖書が復讐の計画を推し進めるために用いられるというのは、キリスト教を信じる人から見れば、どう見えるのだろうとちょっと気になる。(いったん、ここで切ります)
  

Posted by mc1479 at 12:43Comments(0)TrackBack(0)
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