2018年06月26日

あなたには帰る家がある 結末

 以下の文章では、ドラマ「あなたには帰る家がある」の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 主人公の真弓は、日常生活に楽しみを見いだせない人だ。だから、すっかり日常になってしまった夫婦生活には不満ばかり。ナスダ夫婦に踏み込まれて生活はメチャクチャになるけれど、実はけっこうスリルを楽しんでもいたのでは?
 ナスダの妻、真弓の夫の浮気相手・綾子は、日常生活に幸せを見出そうとしてきた人。だから日々の食事つくりや住まいを快適に保つことに気をつかう。それが、秀明に出会って壊れてしまった。「もしかするとこれ以上の幸せがあるのかも」という間違った期待からだろう。期待を持たせるのが悪い、と秀明ばかりを責めるのは気の毒だ。
 その期待が実現されないことを他人から指摘された時には、綾子はまだ自分だけが信じ込みさえすれば何とかなると思う。だって、これまでもそうして自分を信じ込ませて生きてきたのだから。でも実際に秀明と同居「ごっこ」をすれば、さすがに自分でもわかる。その時都合よく、まだ愛してる、帰ってこい、と言う夫の太郎。
 
 何だろう。この綾子のハッピーエンドを素直に祝福できない気持ち。それは、ひと昔前のおせっかいな「愛される女性になる秘訣」と同じような気がするからか。
 愛するよりも愛されるほうに持っていきなさい。そのためには相手も立てて。自分がどれだけ尽くしているか、自分によっていかに周囲が快適になっているかを相手にやんわりと、でもきちんと伝えるようにしなさい。そしてご褒美をもらえばよろしい。
 まあ、だいたいの「愛され方」アドバイスというのは、そんなところ。
 太郎が建てる家は綾子への愛情表現だろうし、ご褒美なのだろう。はっきりとは描かれていないが、勤め始めてみた綾子はきっと家に帰ると同時に勤めは辞めるのだろう。つまり勤めてみたことは「私にはこういう力もある。あなたがいなくてもやっていけるのよ」というアピールだったわけか。
 
 一方の真弓のお仕事ぶりは「セクハラ対策担当」以外にほとんど描かれなかったのは残念だが、きっと真弓にとってはお仕事もすぐ「日常」になってしまい、面白いこともなかったのだろう。
 夫の浮気から起こったことで、さんざん「日常」ではないことを味わった真弓が、「もう日常には帰れない」と思ったとしても不思議ではない。一方、おバカな秀明は、浮気という非日常を自分からやっても、真弓のいる日常へ帰れると思っていた。そして、綾子と暮らしてみれば、これまた「日常」になってしまって楽しくもなんともない。

 だから、結末=真弓とデートすること、は秀明にも楽しいはずだ。何年か先にプロポーズしたら…とわざわざ尋ねるのも、秀明にとってはその先にある結婚生活よりも、まずプロポーズが非日常で楽しいからかもしれない(何しろ昔、砂浜にわざわざ『ローマの休日』の真実の口を作って、そこに指輪を入れてプロポーズした男である)。だとしたら、この楽しさをしばらくは味わっていってください、としか言いようがない。


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