2014年07月29日

『幕末高校生』感想

 やっと書ける。玉木宏くんが好きなので、最初の1~2回は見ても「ああ、このショット好き!」とか「ここ1シーンで見せてほしい!」とか思って、まともな感想になりにくいので。
 というわけで、まともかどうかはわかりませんが、以下の文章では映画『幕末高校生』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 あらためて、俳優さんの力を感じた映画だった。
 現代の高校生三人と教員一人が江戸時代にタイムスリップする、という設定なのだが、江戸時代の人、現代の人、江戸にあっても現代に通じる人、というのがきちんとわかるように演技で表現されていたからだ。
 江戸時代の人間は、あまり感情を表に出さない(そば屋の主人とか、火消しの「を」組の頭とか)。感情を出しているようでも、それは「タテマエ」を言っているように見える(幕臣とか)。一方、現代からやってきた生徒三人と教員の未香子は、思ったことを遠慮なくしゃべる。
 江戸時代の人間の中では、勝海舟は「本音を言っている」ように見え、その勝だけが現代人にも対応できる。実は勝にも秘めた決意はあるのだが、それは最初は明かされない。未香子と最後に向き合う時に、ハッキリ言う。未香子に影響されて勝も口に出すことにしたのかな、とも思わせる。
 他の人物たちの、いかにも江戸時代らしいふるまいがあってこそ、その中では異色の勝が現代人にも対応できる、ということに納得がいく。それは出演者すべての演技が的確だからこそ、だ。
 過去から戻ってきた現代人が物質的に何か得をしたわけではない、というのも気に入った。『バック・トウ・ザ・フューチャー』以来、過去で頑張った分、自分の現在が良くなりました、という結末はけっこうあると思うのだが、そういう実際的なものではなく、心に得るものがあった、というのは奥ゆかしくていい。
 もちろんそのために「売りにくい」映画になっている面があるのかもしれない。ひと言で表現できる映画のほうが、あるいはよく知っているコンテンツを利用した映画のほうが、売るためには圧倒的に有利だ。これは、そうでないところが愛しい映画なのだ。  

Posted by mc1479 at 15:18Comments(0)TrackBack(0)

2014年07月22日

『ジゴロ・イン・ニューヨーク』

 以下の文章では、映画『ジゴロ・イン・ニューヨーク』の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 俳優のジョン・タトゥーロが脚本・監督・主演を務めた……というよりも、招かれてウディ・アレンが珍しく自身の監督作以外に出たことで話題になった。
 祖父の代から続いた古本屋を閉めることになった男(アレン)が、通っている美人の外科医から男を紹介してよと言われ、軽い気持ちで「お金がかかるよ」と答えたのが始まり。花屋のバイトの友人(タトゥーロ)を誘う。こうして新しい商売を始めるが……
 これは、男にとってのおとぎ話なのかもしれない。というのは、出てくる女が皆いい女だから。美人の外科医がシャロン・ストーン。ジゴロが商売を越えて好きになってしまうユダヤの未亡人がヴァネッサ・パラディ。
 ユダヤ教の厳しい戒律によって二人は阻まれ、ジゴロはやめてニューヨークを去るよ、と言っていた男はカフェで出会ったいい女に紹介されると、また「どうしようかな」という表情をし始める。ウディ・アレンの作る映画ほどセリフに溢れてはおらず、ジゴロを笑い飛ばしているわけでもなく、「小粋」と呼ぶにはちょっと泥臭い。そこが物足りない気のする映画。  

Posted by mc1479 at 13:08Comments(2)TrackBack(0)

2014年07月15日

『her 世界でひとつの彼女』

 以下の文章では、映画『her 世界でひとつの彼女』の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 少しだけ未来の話。妻と別居している男セオドアは、人工知能OSを購入する。簡単な質問があり、女の声を選ぶと「サマンサ」という名前のそれは起動する。最初は仕事のアシスタント。パソコンにたまった資料の整理や、メールの仕分けなど。しかし人工知能は膨大な情報を取り込み、セオドアとの会話から人間らしさをも学び、どんどん成長していく。何しろ、サマンサには眠る必要がないのだ。
 サマンサはあくまでも「声」だけの存在だが、机の前でもベッドの中でも電源を入れてイヤホンをつければ、すぐに触れられる。彼女の目の役割をしているレンズを胸ポケットからのぞかせて海岸を歩くセオドアはデートを楽しむ気分だ。サマンサは彼を慰め、励まし、セオドアは離婚に踏み切る。
 しかしサマンサの成長は止まらない。彼女が自分以外の相手とも会話を交わし、恋人も600人以上いると答えたとき、セオドアはがっかりする。さらに成長したいサマンサは、セオドアに別れを告げる。
 これも一種の「ピグマリオン」物語なのだろうか。
 花売り娘を貴婦人に仕立てた教授が見放されるように、自分に最適化したOSだと思っていたサマンサに、セオドアは去られてしまう。おとぎ話と呼ぶにはリアルな話。  

Posted by mc1479 at 13:19Comments(0)TrackBack(0)

2014年07月08日

『マイレージ、マイライフ』

 以下の文章では、映画『マイレージ、マイライフ』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 題名は知っていたが、見たのは初めて。
 日本の航空会社でも、そういうのはあるけれども、その会社の飛行機で飛んだ距離数(マイル)を貯めると特典がもらる仕組み。この映画の主人公のライアンはせっせとそれを貯めている。1000万マイル貯めて、機長に隣に座って話をしてもらうというのを目標にしている。
ライアンがなぜそんなにマイルを貯めることができるかというと、出張の多い仕事だから。いわばクビ言い渡し人。そういう「解雇言い渡し代行会社」が本当にあるのかどうかは知らないが、とにかく企業の要請によって、国中を駆け回って解雇の言い渡しをしている。
 ライアンが勤める会社に優秀な新人が入り、直接向き合わなくてもネットを活用することを提案する。とんでもない、と反対するライアンはその新人を連れていわば研修をさせるはめになる。
 仕事ばかりで身内のことにも構わずにきたライアンが、新人とのやり取りや妹の結婚式を経て変化し、行きずりの関係と思っていた女性の家を尋ねてみる。ここでハッピーエンディングになればロマンチックコメディだ。しかし女性には夫も子供もいて「割り切った関係でしょ」と言われてしまう。「あなたは『息抜き』なの」と。
 ライアンにとって最悪な状態の時に1000万マイルが達成され、機長の隣で話す。
「この時を夢見ていました。あなたとの会話を想像して」と言うライアンに機長は「どんな会話を?」と尋ねるが彼は「忘れました」と答える。このセリフには、夢がかなう時にはこういう場合もあり得るだろうと思わせるリアリティがある。
 優秀な新人は辞め、出張は復活する。「人と人との絆」の大切さを謳いあげる物語が多い中で、それに気づいたからといってそう上手にはいかないんだよ、と言いたげなところが面白い。  

Posted by mc1479 at 13:30Comments(0)TrackBack(0)

2014年07月01日

『人生はマラソンだ!』

 以下の文章では、映画『人生はマラソンだ!』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 オランダで大ヒットしたという映画。もちろんセリフはオランダ語、俳優さんも全然知らない。でも楽しく見ることができた。
 ロッテルダムで自動車修理工場を営むギーア。従業員というより仲間の中年三人男とカードゲームをやったりして、仕事は入った時にやればいいさ、という感じ。移民の若者ユースは真面目に働いている。これで経営していけるのか?と思っていると、税金を滞納していたことがわかり、ギーア自身がガンで余命半年ということもわかる。ユースがマラソンをしていたことを聞いたギーアは、中古車販売会社を相手に賭けに出る。ロッテルダムマラソンで俺たち四人が完走したら税金を肩代わりしてほしい。完走できなかったら、工場を譲る。
 この賭けが納得のいくものになっているのは、病気のギーアが反抗的な息子には自分の工場を継がせることができるのかどうかわからないでいること、ギーア自身が化学療法を望まずできるだけそのまま日常生活を送りたいと願ったこと、マラソンは年齢を重ねた人にも可能なスポーツであること、などの理由が挙げられる。
 結果だけ言うと、練習の末出場したマラソンで三人は完走、ギーアはゴール直前で倒れて、そのまま亡くなってしまう。そのあとが驚きの展開で、仲間たちはギーアを車椅子に乗せてゴールさせるのだ。亡くなった人にそういうことをする、というのは強引ではあるけれど、前半でこの四人の中年男のはしゃぎっぷりがかなり描かれているので、ああこの人たちならこれもアリだな、と思わせる。そういう納得のさせ方が上手な映画だと思った。  

Posted by mc1479 at 13:33Comments(0)TrackBack(0)

2014年07月01日

『罪の手ざわり』

 以下の文章では、映画『罪の手ざわり』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 タイトルがいい。見ようか、という気にさせる。でも、ジャ・ジャンクー監督の映画はしんどい。ただ今回は、いきなり銃をぶっ放して人を殺したり、淡々と飛び降り自殺をするシーンなどがあり、びっくりさせられる。
 描いているのは、単純に言えば「お金が支配する世界では、罪は増える」ということだろう。拝金主義になってきた中国では、こんな凶悪な犯罪が増えている、と。
 強奪した金を故郷の妻子に送金している男(とんだ出稼ぎだ)。「お前なんか金で思い通りにしてやる」と暴力をふるう男を殺してしまう女。仕事を転々として自殺する若い男。
 結末らしい結末が示されるわけではなく、(たぶん)出所してきた女が、故郷から遠く離れた地で就職しようとして断られ、その後観光名所で出し物を見ているシーンで終わる。
 こういう映画が作られる意味は、わかるつもり。ただ、「好きか?」と言われたら、好きではない。  

Posted by mc1479 at 13:17Comments(0)TrackBack(0)
QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1479