2017年05月07日

ツバキ文具店

 以下の文章では、ドラマ「ツバキ文具店」の内容に触れています。ご了承ください。 

NHKのドラマ10。小川糸原作で、原作は読んでいないが、1回目・2回目を見て、なんかイマイチな気がしていた。
 主人公は代書屋で、祖母に昔からその修行をさせられたが、嫌がって家を出ていた。祖母の死後、継ぐはずのないと思っていたそれを継ぐことになり……
 1回目は、我が子のように可愛がっていた猿を亡くした奥さんへの手紙。最初は「ペットを亡くした」ことに対するお悔やみだけを書いて依頼主に叱られ、その猿がかけがえのない存在だったとして書き直す。書く紙や筆記用具へのこだわりも見所で、巻き紙に薄い墨の文字で書く。
 2回目は「円満離婚をする」という夫婦が、結婚を祝ってくれた人たちに出す。印刷だが、パソコンではなく活字印刷にする。

 この2回がなんとなくわざとらしく見えたのは、猿を亡くして少々精神的に常軌を逸しているらしい奥さんのことも「きれいに」描かれ、「円満離婚」に主人公が何となく疑問を持ちつつも、最後までドロドロな部分は見せずに終わっていたからかもしれない。もちろん、本当に「円満離婚」する夫婦もいるのだろうが。

 第三回にして、レギュラーからの代筆依頼。「男爵」と呼ばれる男(主人公の赤ん坊時代のことも、祖母のことも知っているらしい)から、旧友からの借金の依頼を断る手紙。原稿用紙に太めの万年筆、漆黒のインク。
 失礼な手紙を送ってすまなかった、という返事が来て、男爵は主人公にうなぎをおごってくれる。
 その話と、主人公自身が昔つきあっていて別れた男からの代筆依頼を断る話とがうまくからんでいたと思う。話が二つ以上、こういうふうにからんだほうが面白いのかもしれない。  

Posted by mc1479 at 13:45Comments(0)TrackBack(0)

2017年05月07日

リップヴァンウィンクルの花嫁

 以下の文章では、映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 映画封切り時に話題だったと思うので、放映されたのを録画しておいて、見た。
 最初は主人公が受身的で見続けようか、どうしようかと思った。教員だが非常勤なので他のバイトもしている。ネットで知り合った男と結婚することになり、教員を辞めさせられたのを寿退職であるかのように装う。それくらいの嘘は許されるよね、という気持ちから始まって、夫となる人に「親族二人?」と言われて便利屋に披露宴に出てくれる人を調達してもらい、既に離婚している父と母には揃って出席してもらう。
 新婚家庭に訪ねてきた男から、夫がもの生徒と浮気している、それは僕の彼女だと聞かされ(このあたりは単純に信じすぎ、と思うが)だから僕たちも浮気しましょうよと誘われたところを盗撮されていて、それがなぜか夫の母に送られる。離婚、というより追い出されるような形で出てきて、ビジネスホテルでバイト。
 夫の浮気調査を頼んでいた便利屋から「あれはお義母さんから頼まれた、別れさせ屋の仕事ですよ。典型的なマザコンです」と説明され、それに納得がいったのかどうか、自分も結婚式の披露宴の(親族のふりをした)出席のバイトを引き受ける。そこで姉妹役として出会った真白という女性と仲良くなる。
 もとレストランだった大きな屋敷の面倒を見るメイドのバイトをひと月100万円で、と便利屋から依頼され、行ってみるともうひとりのメイドは真白。真白に「友達が欲しい」と言われた便利屋が、初めからそう言うよりは、とメイドという形で頼んだのだとか。
 真白はAV女優で、実は重病患者。仲良くなり、二人でウェディングドレス姿で結婚式の真似事をし、「一緒に死んでくれる?」と真白は聞くが、結局ひとりで自殺する。
 真白の骨を持って彼女の母を訪ねると、娘の仕事も知っていて、「捨てた娘だから」と言いながら母はぐいと焼酎を飲み、裸になって「人様の前で裸になるなんて」と嘆きつつどんどん飲む。そして泣く。つられたように便利屋も泣き、全裸になって飲む。
 この場面がなんともいえなくて。
 そこまで、ややおとぎ話的に描いてきた現代では誰もがたどるかもしれない話、なのかと思い、その舞台のような新婚家庭やホテルや大きな屋敷を見ていた目には、この母の住む家と母だけが生々し過ぎる気がした。いy、ここでこういうのを出してリアルでしょって言うのはちょっとずるいんじゃないかという気分。
 便利屋が本気で泣いてしまっているようなのも不可解。これが嘘泣きで、便利屋はそういう男でした、というのかと思ったら、そうでもないようだ。
 しかもその後、主人公は真白と二人で住むはずだったと思われるアパートで、静かに暮らし始める。いいの、これ? という気がした。
 ひとつの考えとしては、とんでもない異性愛で傷つけられ、やがて同性愛に居場所を見つけた話なのか。そうだから、ふたりの女どうしの結婚ごっこは美しく描かれていたのか。
 しかし既視感もある。ウェディングドレスを試着して写真を撮るというのは「ただ、君を愛してる」を思い出すし、披露宴の代理出席は「家族、貸します ファミリー・コンプレックス」を思い出す。最後にベランダに出て、何もはめていない左手の薬指にあたかも指輪をはめているように振舞って見せる主人公は「オールウェイズ」の小雪を思い出させる。
 しかし、そういう過去の場面を思い起こさせながらも、現代を切り取ったふうな味をもって描けば、それはそれで作品として成り立つということか。
   

Posted by mc1479 at 13:32Comments(0)TrackBack(0)
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