2015年08月28日

『さよなら、人類』

 以下の文章では、映画『さよなら、人類』の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 スウェーデンの作。こういう映画もあるのだなぁと思わせてくれる。
 おもしろグッズを売って歩くセールスマンのサムとヨナタンが一応各場面をつなぐような役割をしているのだが、彼らの出てこない場面もある。
 すべてセット撮影。セットは抑えた色調で、陽も射さず、風も吹かず、雨も降らない。その中で人々が歩き、話し、時に歌う。一番見ものなのは、現代のバーに突然18世紀の騎馬隊とスウェーデン国王が現れるところだろう。
 サムとヨナタンはケンカするが、またやり直そうとするところで終わる。正確に言うと、やり直そうとしたのにまた蒸し返して
「自分の欲望のために人を利用するのか?」
「哲学者気取りだ」
と言い合っている二人に、アパートの管理人が
「なんで夜中に哲学を語るんだ。早朝出勤の者もいるんだ」
と注意するところで終わる。
 この終わり方は面白い。それまでに各場面で繰り広げられてきた奇想天外な、あるいはどこかにありそうな、ちょっと考えさせるような、くすっと笑いたくなるようなものも全部まとめて「早朝から出勤する者の前では、たいしたことではない」と言っているようにも聞こえるからだ。  

Posted by mc1479 at 13:41Comments(2)TrackBack(0)

2015年08月28日

『ボヴァリー夫人とパン屋』

 以下の文章では、映画『ボヴァリー夫人とパン屋』の内容に触れています。ご了承ください。

『ボヴァリー夫人』を愛読するパン屋がいた。場所はノルマンディー。空き家だった向かいに、フランスの田舎に憧れたイギリス人夫妻が引っ越してくる。妻の名前はジェマ・ボヴァリー。
 パン屋は隣人として、また店主と客として、彼女と親しくなっていく。散歩の途中にも出会う。しかし、パン屋とジェマの恋の話かというと、それは違う。近くの別荘に夏の間だけ来ている青年がいる。パン屋が思い描いた通り、ジェマと青年は惹かれ合っていくが、パン屋はニセの手紙を出して、二人の恋を終わらせる。
 果たしてジェマは『ボヴァリー夫人』のような最期を迎えるのか?
 ジェマを演じるジェマ・アータートンはさわやかでエロティック。ファブリス・ルキーニ演じるパン屋は一種のオタクなのだろうが、オタクにはやさしい映画だ。パン屋はジェマからもそんなに責められることもなく、勝手に彼女をボヴァリー夫人に見立てていられるし、パン屋の妻も文句を言うわけでもないのだから。会話の中に出てくる、イギリス人とフランス人の違いみたいなものをもう少し知りたい気はしたけれど。
 パン屋は「『ボヴァリー夫人』は‘退屈する女‘という典型をつくった」と言い、「平凡な女性は人生に退屈したりしない」と言う。なるほど、「退屈」というのは、文化が成熟した果てに出てくる、ひとつの特権なのかもしれない。  

Posted by mc1479 at 13:24Comments(0)TrackBack(0)

2015年08月10日

『ジュラシック・ワールド』

 以下の文章では、映画『ジュラシック・ワールド』の内容に触れています。ご了承ください。


 ふだんなら見ないような映画を見に行った。だって主役の声の吹替が、玉木宏くんなのだ。だから、わざわざ吹替版を見に行った。

 もちろん、娯楽大作だからうまく出来ている。孤島に作られた、生きた恐竜を見て、時には触ることもできるテーマパーク。利益を上げるために、どこでもありがちな「観客がより大きくてスリルのあるものを求めるから」という理由で、遺伝子操作により新種の恐竜が生み出され、それが逃げ出してパニックになる。
 遺伝子操作への不信、恐竜を生きた武器として使えないかと考える軍人、いざという時の危機管理の甘さ……しかし、それらの皮肉や批判は飾りのようなものだろう。
 一番の見ものは、恐竜が生きて動いているように見えるパーク内の風景なのだから。その風景をまさに「子どもの目」で見せてくれるのが、パーク内を巡る兄弟だ。そして、非常事態に対応するヒーロー、ヒロイン的役割を果たすのが、飼育係のオーウェン(クリス・プラット)と現場責任者のクレア(ブライス・ダラス・ハワード)になる。
 どちらかというと最初はクレアの視点から描かれるので、「オーウェン、早く出てこないかな(早く声が聞きたい)}と思ってしまった。
 実は、クレアとオーウェンはデートしたこともある仲。クレアがオーウェンの小屋みたいなところを尋ねる場面を見て、オーウェンは『チャタレイ夫人の恋人』の森番メラーズのようなイメージなのだと思った。人間よりも、人間以外の動物に近いような男。オーウェンは、恐竜のラプトルを赤ちゃんの頃から育てて、ある程度なら自分の言うことをきかせることに成功している。それが非常事態にも役立つわけだ。
 いくつかのスリリングな場面を経て、ちゃんと恐竜対恐竜のバトルも見せる。恐竜好きも満足するのではないだろうか。
 もちろん、オーウェンの声は素敵だ。すでに10年以上前の『タイムライン』から始まって、アニメの『マダガスカル』第1作から第3作まで、と吹替経験をしてきている玉木くんだ。声が良すぎる、なんて贅沢な不満は言わないことにしよう。  

Posted by mc1479 at 08:39Comments(0)TrackBack(0)
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