2015年08月28日

『さよなら、人類』

 以下の文章では、映画『さよなら、人類』の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 スウェーデンの作。こういう映画もあるのだなぁと思わせてくれる。
 おもしろグッズを売って歩くセールスマンのサムとヨナタンが一応各場面をつなぐような役割をしているのだが、彼らの出てこない場面もある。
 すべてセット撮影。セットは抑えた色調で、陽も射さず、風も吹かず、雨も降らない。その中で人々が歩き、話し、時に歌う。一番見ものなのは、現代のバーに突然18世紀の騎馬隊とスウェーデン国王が現れるところだろう。
 サムとヨナタンはケンカするが、またやり直そうとするところで終わる。正確に言うと、やり直そうとしたのにまた蒸し返して
「自分の欲望のために人を利用するのか?」
「哲学者気取りだ」
と言い合っている二人に、アパートの管理人が
「なんで夜中に哲学を語るんだ。早朝出勤の者もいるんだ」
と注意するところで終わる。
 この終わり方は面白い。それまでに各場面で繰り広げられてきた奇想天外な、あるいはどこかにありそうな、ちょっと考えさせるような、くすっと笑いたくなるようなものも全部まとめて「早朝から出勤する者の前では、たいしたことではない」と言っているようにも聞こえるからだ。


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この記事へのコメント
はじめまして。ペペと申します。
『さよなら、人類』のレビューを探しているときに、こちらのブログにたどり着きました。『素晴らしき日曜日』など、他の記事も読みました。青井奈津さんの静かな文章には、とても惹かれます。
『さよなら、人類』は、人類に対する監督のため息あるいは舌打ちのような作品だなあと感じました。観終わって以来、あの作品に漂っていた憂鬱さが頭から離れません…。
一方的な思いをぶつけるようなコメントを突然書き込んでしまい、すみません。これからもこっそり読みに伺います。
Posted by ペペ at 2015年09月29日 18:14
青井奈津です。
ぺぺさん、コメントありがとうございました。アート系。ミニシアター系の映画をたくさんご覧になっているんですね。
そういう中には時に「ああ、こういう世界もあったんだ!」ってものがあります。そんな映画に出会いたいですね。
Posted by mc1479mc1479 at 2015年09月30日 12:14
 

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