2014年11月05日

「死にたくなったら電話して」(李龍徳)の感想①

 文藝賞受賞作である、李龍徳「死にたくなったら電話して」を読んだ。文藝賞に応募してみたけれど、第3次予選通過止まりだった私(青井奈津)としては、応募数1809篇の中から受賞作に選ばれたのは、どういう作品なのだろうという興味があったのだ。というわけで、以下の文章では「死にたくなったら電話して」の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 読み終わって、それから作者と星野智幸との対談を読んでみると、こういう話が求められていた理由がわかる。作品と言えば「感動!」「泣ける!」というのが一番ウケる、ということに対する反発みたいなものがあると思う。最後まで読んでも感動はないし、救われない。それが特徴だ。
 一気に読める小説なのかというと、私は一気には読めなかった。新人賞をとったラブストーリーというのはわりと一気に読めることが多いのだが。
 最初からしばらくの間は、初美がなんとも男にとって都合のいい女に見えて、ノレなかったのだ。電話番号を知って、どんどんかけてきて、デートに応じてみると、さっさと食事代は払ってくれる。セックスにも積極的。しかし、主人公(徳山)が男性で、女性(初美)に惹かれていくとなると、この設定は当然とも言える。逆に主人公が女性なら、そこに現れる男性は(女性にとって)魅力的、言い方によっては都合がいいだろうから。そう思ってはみても、読み始めた時は、初美が都合のよすぎる女に見えて、ちょっとノレなかったのだ。
 初美が、偏りがあるとはいえ、豊富な知識を披露するあたりは「ちょっと変わった女」を描こうとしているのかと思っていたし、右手に本を持って読みながら、左手で徳山の性器に刺激を与える初美の姿からは、ちらっと映画「読書する女」を思い出したりもした。

 ここで、いったん切ります。


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この記事へのコメント
3次予選通過作家と李龍徳との差は膨大にあるだろうと思われます。
Posted by 予選不通過者 at 2016年01月12日 00:59
青井奈津です。コメントありがとうございました。
Posted by mc1479mc1479 at 2016年01月24日 12:28
この作品の評価が気になってネットを彷徨っていたらここに辿り着きました。

vintagepapaさんのような意見。結構ネットでもよく見かけますけど、それって学校教育による悪弊の典型だと思いますね。

結末が敢えて書かれていないことによる余韻、掻き立てられる想像力、そういうものを味わえるのも、小説を読む醍醐味のひとつではないだろうか?

何もかも描かれてしまってはつまらないということも、ストーリーによってはたくさんあるはずです。
Posted by 通りすがり at 2016年03月07日 18:18
 

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