2019年11月06日

「カッコイイ」とは何か

 平野啓一郎さんの本『「カッコイイ」とは何か』の感想です。

 平野さんの小説は何冊か読んだことがありますが、新書形式のものを読むのは初めてです。
 ある映画に「カッコイイことはシンプルではないが、シンプルなことはカッコイイ」というセリフが出てきたのを覚えています。つまり、「カッコイイ」ということを説明するのは、なかなか簡単にはいかない。日常的に使いながらも説明することが難しいことばです。
 著者はまず、「カッコイイ」に近いと思われる「ヒップ」「クール」「ダンディ」などの言葉を取り上げ、その意味に迫ります。多くの例を出しながらの説明も面白いですが、印象に残るのは著者自身の体験をもとにした記述でした。どういう音楽をカッコイイと感じたか、ファッションの流行にどう対応してきたか。それはもちろん「カッコイイ」と思う対象が人それぞれだから、かもしれません。そして私は論述的な文章でも、個人的な体験のほうにより興味を持つ読者なのかもしれません。
 もちろん著者は「カッコイイ」を個人的なことにとどめてはいません。「カッコイイ」が現代の世の中に持つ影響、これからの「カッコイイ」はどうなるのか、というところまで話を進めています。
「カッコイイ」も商品的に、時には政治的に利用されることは何となく気づいてはいましたが、このようにひとつひとつ積み重ねていく説明を読むと納得がいきました。


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