2012年12月23日

「結婚しない」は無料世代?

 玉木宏目当てで、ドラマ『結婚しない』を見ていた。そもそもその目当てが間違っていたのかもしれない。『日経エンタテイメント』誌に書いてあったように、これは「菅野美穂ショー」だったのだ。酔っ払いシーンやキス、ベッドシーン、泣き顔も笑い顔も甘える顔も慈愛に満ちた顔も見せてくれるのだから、菅野目当てで見た人には嬉しいドラマだったのかもしれない。
 私自身はどうもこの主人公に最後まで好感が持てなくて困った。遅刻寸前まで寝坊していて、いつまでも目標も定まらずフラフラしているというのは、一つの典型だと思うが、最初はコメディかと思っていたので、女主人公がブリジット・ジョーンズくらいに強烈ならもっと面白いのに、と思った。ブリジットに比べたら千春はきれいすぎるのだ。寝坊しても髪はさらさら、化粧はばっちり。だから笑えない。男にモテると思ったら「体目当てだった」というオチもないので、なんだ見た目のいい女は男には不自由しないから「結婚しない」のか? と言いたくなってしまった。
 しかし、あるところで若手作家が「今の若い世代のキーワードは『無料』だと思う」というようなことを言っていて、「ああ千春もそうなのか」と思った。無料。今は探せば映像も音楽もゲームも無料で手に入る。今の若い人はまず無料で手に入るかどうかを探し、なければ諦めるのだという。そして無料で手に入るなら、多少悪くても文句は言わない。無料なんだから。
 千春は35歳だが、その発想に近いところがある。対価を支払わなくていいなら、そのほうを選ぶのだ。
 家に居づらくなったら居候を決め込み、言葉だけで応援できるなら、画家になろうとする工藤くんを応援する。春子に追い出されても自分でお金を払ってホテルに泊まろうという発想は初めからないようで、結果、男とベッドイン。そのほうが楽な選択だったからではないだろうか。だから最後に千春がようやく自分の道を見つけて歩き出す、というふうに演出されていても「本当にそうなのか?」と思ってしまう。千春が春子さんのマンションを借りているのは、そのほうが楽だからだろう。気の置けない女どうしでおしゃべりし、実家も近く、何かあったらまた頼れそう。工藤くんと一緒に北海道へ行かなかったのは「千春なりに自立したから」というよりは、やはり楽なほうを選んだから、と見えてしまうのだ。
 これなら結婚しなくていいよね…その言葉さえ、楽なほうを選んだように聞こえてしまう。なんだかんだ言っても「結婚」は責任を背負うことではあるのだから。そしてこんな結論に至るまでに11回もかかったのかい、このドラマ。と醒めてしまうのだった。


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この記事へのコメント
えっと…青井奈津さんでよろしいんでしょうか?
こんにちは、すももです。
ブログにいつもコメントくださり、ありがとうございます。今日は遊びに来ました~♪

『結婚しない』の感想、興味深く読ませていただきました。
最後の4行、私もそこに引っかかって、最後の最後で気持ちが醒めてしまった部分があります。
まだ自分の感想まとめにとりかかれてないんですが、書きたいことが湧きあがって来ないのも事実で(汗)
二人の選択(とくに純平の気持ち)に私自身納得がいかない状態で終わってしまったことが、なんとも悔しい気持ちです。
多少でも共感する部分がないと、書こうという思いが盛り上がれないんですよね。

でもツイの反応を見ていると、若い人には「いいドラマだった」「感動した」「いい終わりだった」と言う感想が凄く多くて、彼らにとってはあの二人の選択も、もの凄く共鳴できるものだっていうことなんでしょうか。
やっぱり「無料世代」?(苦笑)
Posted by すもも at 2012年12月25日 12:16
すもも様、すみません。今頃になって書いています。
 実は『結婚しない』の後、35歳の女性主人公にこだわって何か他の作品を見てみようかと思ったのですが、根性がなくすぐに挫折(あまり作品が思い浮かばなかった、というのもあります)。
 小説で、2,3、35歳の女性を主人公にしたものを見ると「ここで結婚しておくべきかな」とか「子どもは欲しいよね」というようなのは、うかがえました。でも、そこから先へ発展させることが出来なかったんです。
というわけでロクなコメントが書けなくてごめんなさい。すもも様のブログはいつも楽しみにさせていただいてます!
Posted by 青井奈津 at 2013年08月18日 20:22
 

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