2014年05月13日

『ブルージャスミン』

 以下の文章では、映画『ブルージャスミン』の内容に触れています。ご了承ください。

 ウディ・アレンの映画の良い点は、その短さにもあるのではないだろうか。80数分~90数分が多く、2時間を超えるものはほぼない。
 その短さでも登場人物の多くがしゃべりまくるので、内容は濃い感じがする。ダレることなく、最後まで見ることができる。
 というわけで久々に、コメディとは違う『ブルージャスミン』。最初にいきなり飛行機で隣に座った女性に自分のことをずっとしゃべり続ける場面があり、しかもお金がないのにファーストクラスに乗ってきたというところから、ジャスミンという女主人公の一種の異様さが見える。だからこの女性を乾いた気持ちで突き放して見ることができる。
 夫のおかげで得ていた華やかな生活と、自分で生きていく基盤ができるまで、と転がり込んだ妹の家での生活。現在のジャスミンと過去の彼女を交互に描く脚本もうまい。
 アレンはおそらく女性に対して、こういう辛辣な目を持っているのだろうが、一方でジャスミンを演じるケイト・ブランシェットには信頼を寄せているように見える。それがこの映画をうまく仕上げているような気がする。ジャスミンは突き放されて描かれるが、彼女を演じるケイトは突き放されていない。ケイトはむしろ監督と似たような立場に立って、ジャスミンを表現しているように見える。強い酒をあおり、目の下にくまを作っているような役は、ともすると「やり過ぎ」になりがちだけど、ケイトは上手にその一歩手前でとどまって、ジャスミンという女を、ひどい女なのだけれど、徹底的にバカにして「自分とは全く関係ない」と言い切ってしまうのは少し気の毒かな、と思わせるような微妙なところを演じている。
 もちろん、ケイトの外見も関係している。ぜい肉のない身体、セミロングの金髪、きちんとしているが厚すぎない化粧……いかにも「いいとこの奥さん」風の雰囲気を、この人は身につけているのだ。


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