2014年03月31日

『ウォルト・ディズニーの約束』

 以下の文章では、映画『ウォルト・ディズニーの約束』の内容に触れています。ご了承ください。

『メリー・ポピンズ』の原作者P・L・トラヴァース。長年その映画化を望んできたウォルト・ディズニーに、やっと会うことにする……
 この映画はディズニー・プロダクションが作っているので楽曲や映画の一部分は使えるし、ディズニーのキャラクターやディズニーランドを映し出しても問題はない。
 実際のP・L・トラヴァースは当時、今のエマ・トンプソンよりもっと年上だったのではないかと思うが、やっぱりこれはエマの役だろう。パキパキのイギリス英語を話し、周囲の者をファーストネームで呼び、自分のことも「ウォルト」と呼ばせているディズニーに「ミセス・トラヴァースと呼んで欲しい」と言い、映画化に際して守ってほしいこと、してほしくないことを押し通そうとする。対するディズニーを演じるのは、トム・ハンクス。
 P・L・トラヴァースについてはほとんど知らなかったので、描かれていく彼女の幼い頃が興味深かった。いかにもイギリス人の顔をしているが、実はオーストラリアの出身。酒のせいで仕事に支障が出るような、しかし娘の想像力だけは限りなく認めてくれた(というより彼自身がたぶん、空想の中に生きるのが好きな男だった)父親がいた……
 トラヴァースの父は娘には甘かったが、父のせいで一家の生活が脅かされたことも確か。
 一方、ディズニーには厳しい父、兄と自分に新聞配達をさせた父の思い出があった。
 最初に考えられていた映画『メリー・ポピンズ』のラストシーンがどんなものだったかは知らないが、そこに出てくる幼い姉弟の父バンクス氏が良い人だとはっきりわかるようなラストにすることでトラヴァースは合意し、映画化もやっと軌道に乗り始める……
 いろいろあって映画のプレミアの日を迎えても一筋縄ではいかない彼女、映画を見て涙を流しながらもディズニーから「大丈夫」とささやかれると、「アニメがひどくて」と答える。
 トラヴァースにとってはこの映画化でもまだ不満があったのかもしれないが、一般的に考えれば、この映画があったからこそ『メリー・ポピンズ』はさらに有名になり、残ったのだと言える。そもそも映画『メリー・ポピンズ』が有名でなければ、その誕生秘話を描いたこの映画への興味もわかなかっただろう。あの映画があったからこそ『メリー・ポピンズ』は残り、こんな裏話も映画化される。
 そう考えれば、トラヴァースをもてなし、手こずり、ロンドンへ訪ねてまで説得したディズニーはやはり仕事の出来る男だったのであり、はるか先を見通していたのだとも言えるだろう。


この記事へのトラックバックURL

 

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1479