2014年03月18日

『私の嫌いな探偵』感想②

 後半(5話~8話)の見どころは、朱美×鵜飼×流平、あるいは朱美×鵜飼×砂川のやりとりがこなれてきて面白かったところ。テンポというかタイミングというか、ちょっとした動作の合わせ方とか。
 進展したことは最終話に至ってまさかの「鵜飼は朱美のことが好き?」というのがあったが、これを恋愛感情というのなら、そういう感情は特に入れなくてもよかったのに、と思う。推理マニアという一点だけで結びついているだけで十分なのでは?
 私は、玉木宏は感情を抑える(ような立場に立たされる)役が似合うと思うし、それが抑えきれずにあふれ出す表現もまた素晴らしいと思うのだが、その感情が「恋愛」である場合はよほど相手に魅力がないと説得力がない。酒屋のさやかさんを「小娘」呼ばわりしていた鵜飼から見れば、女子大生の大家さんは小娘すぎて恋愛の対象ではないと思うけどなぁ…
 まあ、この脚本自体、じっくり一歩一歩展開していくというよりは、急展開だったり、反復していくうちに様々なバリエーションが出てきたりすることの多いものだったと思うので、急展開自体は驚くことではないのかもしれないが、恋愛要素は不要だったのでは?
 殺人の理由は聞かないのが鵜飼の主義だが、7件の事件のうち、1件は事故隠しなので除くと、5件がある人を愛するゆえの殺人、と言える。そして最終話も「愛による殺人」と言ってもいいのだが、他の対象が人だったのに対し、ここでは愛の対象が烏賊川市。 登場人物達の住む市である。
 最近の、なんとなく愛国的であることが流行しているような雰囲気の中で、自分の住む市に対するすさまじい愛を持った男が殺人を犯すというのはかすかな皮肉? とも思ったが、まあこのドラマの場合、あまりそういう詮索はしないほうがよいのだろう。


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この記事へのコメント
初めまして。
いつも、明確で端正な文章を楽しませて頂いています。
今回のご感想も、ほんとにおっしゃるとおり!
まさしくその通りと共感致しました。
映画の記事もいつも楽しく読ませて頂いています。日頃の感謝を込めて書かせて頂きました。失礼します。
Posted by ちゃり at 2014年03月21日 15:12
ちゃりさん、ありがとうございました。
感想いただくと励みになります。まだ書いてなかった映画についても書こう!と書いたのが『あなたを抱きしめる日まで』です。ご覧になっていないとネタバレなんですが…
Posted by 青井奈津 at 2014年03月24日 13:39
青井さんがずばりと書いてくださったので、溜飲が下がりました。
ミステリーで男女コンビだと必ず恋愛要素が入り、それによって話がだれるのが苦手です。
このドラマはそうじゃないところが好きだったのですが‥‥やはり主演女優さんのPV的な面が出てしまったなあと残念でした。
それからこれは個人的な思い込みなのですが、相手役が若ければ若いほど老けたなあと感じてしまいます。(よくある60代の俳優の妻役が40代とか)
玉木さんは老けるには早いのに、女子大生におっさん呼ばわりされるのは見ていて辛かったです。
長々と書き連ねて申し訳ございません。
「曹操暗殺」はご覧になったでしょうか。
ぜひ青井さんの鋭い感想をお聞かせ願えることを楽しみにしております。
Posted by ゆう at 2014年04月13日 06:05
ゆうさん、ありがとうございます。原作では朱美が少し鵜飼のことが気になってきたかも?ぐらいはありましたが、それくらいにしておいてくれれば良かったのに。まあ、最後の鵜飼さんの名セリフ「私にはバードウォッチングの趣味はない!」を言わせるためだけの伏線だったと思うことにしています。
『曹操暗殺』は名古屋で公開されたら見に行きます。DVDでは既に見ていますが(過去記事に書いたと思います)。
Posted by 青井奈津 at 2014年04月14日 18:21
 

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