2014年03月15日

『桐島、部活やめるってよ』

 原作は読んでいないのだが、映画もかなり評判になったものだったので、放映された機会に見た。
 以下の文章では映画『桐島、部活やめるってよ』の内容に触れています。ご了承ください。

 バレーボール部のエースなのに突然部活をやめると言い、学校へも来なくなった桐島。不在の桐島をめぐって、バレー部の男子、桐島とつき合っていた女子とその友達、桐島の友人だった男子グループ……と、さまざまな立場からの数日間が描かれる。出演している若手俳優たちは神木隆之介、橋本愛、東出昌大…となかなかのメンバー。
 一見して感じるのは「テンションの低さ」だ。最近、テンションの高いTVドラマを見ていたからそう感じるのかもしれないけれど、桐島と連絡もとれない状態になって苛立ち焦りながらも、誰も声を荒らげたり叫んだりすることはない。奇妙なクライマックスは、桐島が屋上にいると思った男子たちが、屋上で撮影中の映画部員たちの中へ走り込み、言い争いになる場面だが、それだって高校生を主人公にした映画ならなりがちなように殴り合いになるわけではない。そういう醒めた感じがこの映画の興味深いところで、びっくりマーク付きの「感動!」なんてものを求める人は、この映画を見てもつまらないだろう。
 高校生の部活にもカッコイイものとカッコ悪いものとがあって、どうやら映画部は最もカッコ悪い部類に入るらしい。この映画の監督の吉田大八監督は「学校がすべてじゃない」と思いながらもそれを押し付けるのではなく「高校生にとっては、やっぱり学校がすべてなんですよね」と言っている。だから学校外の映画館で日曜日にかすみ(橋本愛)と出会い、ちょっといい気分になった映画部の涼也(神木隆之介)は、学校という場所に戻ればたちまち自分はかすみの相手になんかなれないという事実を突きつけられるのだ。
 それにしたって映画の作り手たちが映画部の涼也に自分の思いを重ねるのは当然のことだろうし、顧問の先生の脚本ではなく自分で書いた脚本で映画を撮ろうとする涼也は、実は一番よくものごとが見えているようでもある。その脚本の中のセリフとして「戦おう。ここがおれたちの世界だ。おれたちはこの世界で生きていかなければならないのだから」という言葉も出てくる。また、父親譲りの古い8ミリカメラで撮影して「フィルムにはビデオに出せない味がある」と主張する涼也には共感する映画ファンも多いかもしれない。
 その上、涼也は自分がどの程度の者かもわかっているのだ。桐島の親友でスポーツ万能、彼女もちゃんといる宏樹(東出昌大)に「将来は映画監督?」と聞かれると、それはない、無理、と答える。このテンションの低さと悟りっぷりと「それでも好きなことは続ける」というのがまさに今の気分、と言われれば確かにそんな気がする。


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