2013年12月13日

『カティンの森』

 これはNHKのBSプレミアムで放映されたのを録画して、見たら消去するつもりでいたのだが、見たらなんだか消せなくなった。
 以下の文章では 映画『カティンの森』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 この映画の持つ「本物」の感じが重く迫ってくる。監督のアンジェイ・ワイダは実際にカティンの森で、父を虐殺されたのだと言う。
 そういう意味だけでなく、画面から伝わってくる「本物」の感じ。降る雪も、冷たい土も。そしてときどき、完璧な構図で捉えられているような画面が出てくる(たとえば、割られた墓石)。
 カティンの森で虐殺された将校の話を中心にしているものの、エピソードがいくつも出てくるし、戦後の話にも及ぶ。やや散漫になってしまうのではないかと思うが、そんな中に詩情あるシーンがふっと挿入される。たとえば、ポーランド将校の妻と幼い娘を匿った赤軍将校が、その娘の落とした小さなぬいぐるみを拾うシーン。また、たとえば、カティンの虐殺はドイツがしたことと決めつけるソ連に反発し、ソ連兵に追われた若者が逃げて登った屋根の上のシーン。
 ポーランド将校の残した手帳が発見され、ラストで再現される虐殺のシーンは恐ろしくリアルだ。機械的に、次々と殺されていく人々。穴に放り込まれる死体。土をかけていくブルドーザー。その恐ろしさはこけ脅しではなく、必要なものとしてこの映画を成立させている。


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