2013年12月10日

『六条御息所 源氏語り』を読んで

『六条御息所 源氏語り』(林真理子)を読んだ。
以下の文章では、この本の内容に触れています。ご了承ください。

 これはまだ第一巻で(一 光の章)、全部で三巻の予定なのだそうだ。雑誌『和楽』に連載したもの、と聞くと「なるほど」と思う。あの豪華な作りの、通信販売のみの(今は書店でも売っているが)雑誌に、源氏物語はふさわしい気がする。
 読んでみようとする人は、おそらく源氏物語のあら筋くらいは知っているだろう。それを想定した上で、光源氏をめぐる女たちの中でいわば悪役(生霊となって他の女をとり殺す)である六条御息所を語り手にしたのは上手い。
 しかもここでは彼女は既に亡くなっているという設定。現世への執着ゆえに、漂いながらあれこれとこの世の様子を見ている、というのも納得がいく。
 末摘花は亡くなって六条御息所と出会っても「むむむ」とくぐもった声で言うだけで言葉を交わさない、というのも面白いし、六条御息所が取りついて殺したことになっている夕顔はそれほどの美貌も教養も才気もないが、心の中を見せず、男からはいとしいと思われる女、と描写されると、プライドの高い六条御息所から見ればまさにその通りだったのだろうと思う。
 読者が期待するような(?)身体的描写もされていて、光源氏は「ほとんど歩くことのないふくらはぎは女のように細い」と書かれると、なるほど、と感じる。
 ある程度源氏物語を知っている人に向けて書いた源氏の一バージョンとして楽しめる。


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