2013年06月17日

映画『マリーゴールドホテルで会いましょう』を見て

以下の文章ではこの映画の内容に触れています。ご了承ください。

 インドのリゾートホテル(シニア向き・長期滞在型)にやってきたイギリスの男女7人。ホテルは高級とは言えず、若いオーナーはそれでも悪びれず愛想だけはよく、帰る費用もない彼らは、それぞれにインドでの暮らしを模索する。
 亡き夫の借金のため家を売ったイヴリンは仕事を見つける。イギリスにいた頃からひびが入り始めていたダグラスとジーン夫妻の仲はいよいよこじれ始める。ダグラスはイヴリンに同情し、ジーンはグレアムに魅力を感じる。しかしグレアムは自分はゲイだと言い、昔住んでいたインドへ来たのはもう一度「彼」に会いたいからだと告白する。マッジとノーマンははっきり言って色恋が目当て。一番差別的な発言をするミュリエルは以前は大きなお屋敷の家政婦だった。
 ここに描かれたのは一種の理想の老後だろうか?
 年をとっても積極的に自分とは異なるものに触れ、なじみ、関わっていく。もちろんそのためには、ある程度のお金は必要だ。彼らは大金持ちではないが、貧乏人とは言えない。
 最後近くに「色恋は永遠よ」というセリフがあった。そうなのか、と思う。そうなのか、は「そうなのか前向きだなあ」という意味であり、「そうなのか大変だなあ」という意味でもある。60代(だと思う)から、また恋を始めるのか。彼らには同性どうしで喋っているほうが気楽、とか趣味に生きる、という選択はないかのようだ。
 そんな中で唯一死を迎えるのが同性愛者のグレアムなのは意味深な感じもする。一方、グレアムの死は理想的にも見える。昔の彼を探し出して会った後、亡くなったグレアムを彼はインド式に葬る。
 ホテルが閉鎖されるかも、という危機を越えて留まることにしたメンバーは、今後も恋を追求するのだろうか?
 もちろんシニア世代を主役にした場合、前向きなラストにするのがいいという要請(?)があるのかもしれず、終わり方を心地よくするためにも、それは必要なことかもしれない。そして実際、満足感は与えてくれる。それでも、生きる限り、そうしなければならないというのが彼らの文化でありこの作品のテーマなら、それはそれで大変だろうな、と思うのだ。


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