2013年06月02日

映画『イノセント・ガーデン』を見て

以下の文章では映画の内容に触れています。ご了承下さい。
 
 この日本題名を見ると「庭」が最も重要な場所になるのかと思うけれど、原題はStoker.つきまとうストーカーではなくて、女主人公を含む一家の姓なのだが、Stokeには「火を起こす、(怒りを)かきたてる」という意味もあるそうだ。
 18歳になったインディア(ミア・ワシコウスカ)に届けられた鍵。それまでの誕生日にはずっと靴が届けられていたのに。何の鍵?と思う間もなく、彼女の最愛の父が事故死。その葬儀の日から滞在するようになった叔父のチャーリー(マシュー・グード)。母(ニコール・キッドマン)はチャーリーに惹かれているようでもあり、そしてインディも、となると三角関係の話を中心に進むのか?と思うが、長年勤めていた家政婦が消え、母に話をしに来た大叔母も消える。どう見ても怪しいのは叔父なので、叔父の正体とインディの変貌が見ものになる。

 飽きさせないが、どこか想像と違った。
 インディは鋭い感覚の持ち主という設定になっている。初めの方に、彼女がゆで卵をテーブルに押し付けながらゆっくり殻にひびを入れ、みじゃみじゃいう音を聞かせる場面があるのだが、そういう細かい不快さみたいなものをもっと見せてほしかった。ショッキングな事件を重ねるよりも、彼女自身の感覚が彼女だけに見せてしまうもの、感じさせてしまうものを通して、いっそすべてが彼女の妄想かもしれない、というような描き方がされていれば、その方が好みだった。
 ピアノ演奏のシーンは官能的だが、あえて息遣いの音を入れなくても十分官能は伝わったような気がする。インディのような少女なら、手紙の扱いはもっと丁寧にするような気がする。というように細かいところで私の望む描写とは少し食い違う。面白くないわけではない。しかし感性に訴えるような作品に、自分の好みを反映させて見てしまうと作り手とのずれが感じられてしまうということだろう。


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