2013年04月25日

テルマエ・ロマエ

 これも映画館では見なかったので、TV放映されたので、見た。昨年のGWは映画館で映画を見なかったな、と思い起こす。『テルマエ・ロマエ』はもし自分が家族連れで(子供を含む)見るという仮定なら見るような映画だ。
 武内英樹監督作というと『のだめカンタービレ』が強烈なので、どうしてもそれとの関連を考えてしまう。『のだめカンタービレ』に始まった「日本映画のハリウッド化」は『テルマエ・ロマエ』で完成したんだな、という気がした。どういうことかというと、昔のハリウッド映画は舞台が中国だろうとインドだろうと、ハリウッド俳優がインド人や中国人を演じていた。そして英語をしゃべっていた。『テルマエ・ロマエ』を見ると、それを思い出す。

『のだめカンタービレ』のスペシャルドラマがヨーロッパで撮影された時、言葉の問題、つまりそこで話されるセリフは何語にするか、に関しては悩んだ末に「みんな日本語」になったと聞く。正解だと思う。テレビドラマで字幕ばかりだったら、チャンネルを替えられる。それで『のだめカンタービレ』はマングースに「ここからは日本語でお送りします」というような解説を言わせて、日本語にした。映画版『のだめ』でもそれを受け継いで、出てくる人はフランス人だろうがロシア人だろうが、セリフはみんな日本語。

『テルマエ・ロマエ』ではさらに進んで、ヒロインが古代ローマに行って二言三言はラテン語をしゃべるが、その後自然に日本語の会話に切り替わる。もはやマングースによる「お断り」は、ない。さらに、ローマ人を演じているのも日本人俳優である。『のだめカンタービレ』では外国人の役は外国人が演じていたが、主役は日本人だった。『テルマエ・ロマエ』のように主役が外国人となると、候補を探すのが大変という理由もあるだろう。じゃあローマ人も日本人が演じればいい! まさに昔のハリウッド映画と同じだ。それをやってしまったのは、なかなかすごい。

 作品内容的にも『のだめカンタービレ』との共通点は見てとれる。『のだめ』では音楽こそがもっとも大切で、恋もいさかいも、それにからんで動く。『テルマエ・ロマエ』では風呂こそが最上の文化で、歴史も命もそれに関わる。クラシックファンでなくても『のだめ』が楽しめ、古代ローマの歴史に詳しくなくても『テルマエ・ロマエ』が楽しめる点も似ている。人間として共感でき、笑わせておいて、せつなくさせる。

 そうやって見てくると『女信長』は武内作品としては、どう位置づけられるのだろう? 
 気持ちよく見られる作品というのは、主人公が基本的には善人で品があって、共感できる人であると私は思う(もちろん、そうでなくても好きな作品はあるが)。『女信長』の主人公はそういう要素に欠ける。
 私は武内演出のTVドラマをずっと見てきたわけではないし、今後どうなっていくかの予想もできない。が、できれば、殺人もセックスも描かなくても面白い作品が作れる、という才能を生かしていってほしいと思う。


この記事へのトラックバックURL

 

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1479