2013年04月05日

ホテル マジェスティック 感想②

さて、私の興味だった2点についても、書かなくては。

1 なぜ澤田教一は命がけでベトナムにこだわり続けたか。

 ベトナムの写真を撮り始めてから、しばらくして(いつ、と明確に示されているわけではない)「写真で戦争を伝えなくては」「写真で戦争を終わらせるんだ」という自覚を持つようになったから。

 口にすると「キレイごと」になりそうな理由である。
 この劇では「ベトナムにいつまでたっても平和が来ない。世の中を変えるには武力しかないの?」という平良への反論として登場する。女性カメラマンの平良は、その頃の良識ある人々の考えを体現しているような人物で、その分ひとりの女性としてのリアルさにやや欠ける。それに対して実際の戦場での体験を交えながら語る澤田。その迫力によって納得させている感がある。
 澤田には「戦争から帰ってきたら飲んだくれになった父親」への反発や「日本へ帰ったら何が撮れるのか」という悩みもあるというふうにセリフからは察せられる。、もしかしたら戦争に惹かれ、その写真で得られる大金にこだわっていたかもしれない澤田は、ここでの反論によって「正義の」ジャーナリストたり得ている、とも言える。
 実際は、べトナムにこだわり続けることにはもっと複雑な背景があっただろうと反論されそうでもあるが、その場の迫力によって観客はこの「正しい理由」を受け入れる。

2 サタ夫人との関係

 これはもう、サタさんの澤田教一への愛のかたちが、好きな男のすることなら、「全肯定」なのだった。
 これも舞台ならではの納得のさせ方だと思う。冒頭の場面で「カメラでサタさんを幸せにする」と言い切る澤田の姿があまりにも愛らしいので、サタさん同様、見ている側も「この男がベトナムに居たいって言うのなら仕方ないか」と思ってしまうのだ。言葉で説明するよりも、二人の「離れ難さ」「一心同体ぶり」を見せられてしまう。

 理屈で説明されたら「本当にそうなの?」と思いそうなことも、実際に「見せる」ことによって納得させてしまう。舞台ならではの方法だと思った。
 


この記事へのトラックバックURL

 

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1479