2013年04月04日

ホテル マジェスティック 感想①

以下の文章では、舞台『ホテル マジェスティック』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 不満は、あると言えば、ある。
 泥沼化する戦争、より刺激的なものを求める読者、戦争中毒…それらはセリフの中で語られることはあっても、それらを追究することなく終わっている。
 自分の抱える矛盾を戦場カメラマンである澤田教一が感じていたことは、日本へ帰ろうというサタに対するセリフ、「僕は怖いです。日本には戦争がありません。僕に何が撮れるのでしょうか?」から察せられるが、結局それが澤田の中でどう処理されたかは明確にはされない。
 ただ、ベトコンに捕まった澤田が帰ってくるエピソードの次にホテルを去る日の場面が来ることから、澤田自身が自分の(それにもちろんサタ夫人の)安全を考えて日本へ帰ることを納得したのかと受け取れる。
 
 ここでは、戦争というシステムの解明はされない。
 澤田が最後のモノローグで素朴に語るように
「戦争は、人格ば変えるんです」
「戦争は、人殺しのゲーム」というのが、ここでの「戦争」の核となるイメージなのだろう。戦争で金儲けする人がいるとか、戦争を望む人がいるのは許しがたいという角度から見るのではなく、戦争は「人」を壊してしまうというその一点において、もっとも憎むべき悪なのだ。それは、大多数の人にとって共感しやすい考えだろう。
 そういう点において、『ホテル マジェスティック』は多くの人の心を揺さぶるようにできている。巧いと思う。
 もっと巧いと思うのは、「玉木宏を見せる」という点において、なのだが。


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