2017年01月24日

人生オークション

 以下の文章では、原田ひ香の本「人生オークション」の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 「人生オークション」「あめよび」の2作が入っているのだが、どちらかというと「あめよび」のほうが印象に残った。もちろん、タイトルとしては「人生オークション」のほうがインパクトがあるだろう。不倫のあげくに離婚した叔母の、せめて賃貸料の足しになるかと、叔母の持ち物をネットオークションに出すように勧めた「私」がその手伝いをしながら、叔母の人生を垣間見ていく。ブランドもののバッグは結構売れるが、衣類は安くてもなかなか売れない、などのオークションにありそうなことも描きながら、叔母に反発しながらもどこか自分と似ているところもあるとわかっていく「私」。
「あめよび」のほうは、あるラジオ番組のファンであることをきっかけに知り合った男性・輝男と付き合う美子の、そのずるずると続いている関係をどうしようかという話だ。結婚したいと美子が言っても、自分はそれに向かないと答える輝男。両親の不仲を見てきたことを話す輝男は「諱(いみな)」を持つという地方の出身なのだが、ではその大切な諱を教えて、と美子が迫るとそれは教えてくれない。結局輝男と別れた美子は結婚紹介所で知り合った男性と結婚し、飛行場で再会したとき、輝男は美子に諱を教える。
 ラジオ番組のファンの集まりやら、ラジオで自分の投書か読まれることを生きがいにしている「ハガキ職人」と呼ばれる人たちの存在や、諱を持つ人たちのグループ、というように「へえ、そういう世界もあるのか」と思うようなことが次々と出てくるのが、こちらのほうが面白いと思った理由かもしれない。これが男性作家だったら、どうしようもない輝男に、それでも美子はずっと付き添っていく、ということになるのかもしれないが、別れたところが女性作家らしい現実味があると思った。
 それは「人生オークション」のほうにも言えて、叔母は自分の人生を建て直せそうなきっかけを得て、パート勤務とはいえ、就職が決まったところで、話は閉じられる。
 んあとか前向きに生きていけそうなところで終わりにするのが、この作者の後味のいいところかもしれない。


この記事へのトラックバックURL

 

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1479