2016年12月17日

ロマンチックウィルス

 以下の文章では『ロマンチックウィルス』(島村麻里・集英社新書〉の内容に触れています。ご了承ください。

 著者の名前も初めて聞いたし、こういう本が出ていることも今まで知らなかったのだが、世間的には「いい年をした」女性の熱中ぶりを書いているということで、興味を持った。
 出版されたのは二〇〇七年。ここで取り上げられているのは主に「韓流」、中でもペ・ヨンジュンに熱狂した人を対象に考察している。
 それまでファン活動などしたことがなかった、もしくはうんと若い頃にはあったけれどずいぶん遠ざかっていた・・・・・・という人たちが大量にファンになる。ファンとしては「ビギナー」なので熱中の度合いが高い。お宝が増える、よく出かける、〈たとえば韓国語の)勉強をする、仲間が増える・・・・・・
 そういう人たちは「こんな自分が好き」「まだ、自分にもこんな部分があったんだ」と自己愛に浸っている面もある。
 ある程度まで、元気になる、生きがいができる、など良い面が多いが、人の迷惑も考えずに自分の趣味を押し付けようとしたり、仲間うちでトラブルになる、など行き過ぎると弊害もある。
 また、日本(東南アジア)では、結婚していても「女性ひとりでのお出かけ」が認められているという基盤があってこそ、この熱中も起こるのだというのは面白い指摘だ。欧米のように「出かけるならペアが基本(夫婦なら夫婦揃って出かける)」という文化の強いところでは、なかなか既婚の女性ファンが大量に集まって熱狂する、という場は生まれにくいのだとか。
 もうひとつ、いわゆる「アイドルにきゃきゃあ言う」ようなことからは卒業した、と見られている中高年女性に(当時の)日本は鑑賞に耐えるようなテレビドラマなどをうまく提供できていなかった、そこに上手にはまったのが韓国ドラマではないかという考察も面白い。
 現在は少し状況が変わってきているのかもしれないが、韓国ドラマの人気が高まったことで、作り手側が意識的に高い年齢層に向けた作品を発し始めたのなら、それはいいことだろう。まあ、実際には経済力を持っている人たちを「おばはん」と呼んで排除できなくなったという商業的な理由がるわけだが、どんな理由でも、今までほぼ無視されてきた世代が重視されるようになったのなら、それはいい。
 結論的には、著者はロマンチックウィルスに感染することも上手に生かしていこう、という立場。元気になれるし、仲間も作れる。もちろん、ひとりで楽しんだっていい。長い老後にもいい刺激というわけだ。
 でも、そうまとめられてしまうと、何か物足りない気もする。著者自身、韓流ではないがかなりのファン歴があるそうで、読み物としてはきっとそれを書いてもらったほうが面白い。とは言っても、新書であるからには、こういうまとめにんるのだろう。


この記事へのトラックバックURL

 

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1479