2016年05月02日

「屋上の道化たち」感想

 以下の文章では、島田荘司著「屋上の道化たち」の内容に触れています。ご了承ください。

 「御手洗潔シリーズ」は30年以上に渡って書き継がれてきたミステリーだが、私は玉木くんが御手洗を演じる、と知ってから読んだので、発表順には読んでいない。それでも、ミステリーというだけでなく、時には文明論や社会批判を登場人物の口を借りて語らせている、というのはわかる。長編が多いが、作者自身、楽しんで書いているのではないかという気もする。
 「屋上の道化たち」はシリーズ最新作。発行された時点で読むのは、私は初めて。
 時代設定は1991年1月。舞台は神奈川県T見市。

 御手洗シリーズの魅力がとんでもないトリックにある、という人にはいい。ここでは誰かが意図的に仕掛けたわけではないのだが…
 御手洗と石岡のやり取りを楽しみたい人には、まあまあ。シリーズ中には、二人がわりと最初から登場するものと、事件が起こってから登場するものとがあるのだが、これは後者。
 俺流ラーメンを出すおやじの店を訪ねるあたりが、一番楽しい。
 もちろん、事件は明確に説明され、その意味ではスッキリするのだが、物足りなさを感じる人もいるかもしれない。
 ここには、長年にわたる怨みや計画があるわけではない。海外まで行って、謎の追求をするわけでもない。都市論や文明論めいたことも語られない。
 ただ、発売された時点で読む面白さはあった。島田氏自身、「あさが来た」を欠かさず見ていると呟いておられた。本作に最初に登場する人物の名は信一郎(新次郎じゃなくて!)。その相手になる女性は大阪出身で今も大阪弁を話す。もしかしてあさドラの影響?等と考えるのも愉しい。


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