2016年04月26日

小川洋子「最果てアーケード」感想

 以下の文章では、小川洋子の「最果てアーケード」の内容に触れています。ご了承ください。

 久しぶりに小川洋子の作品を読んだ。もっとも、それはこちらの都合で、作者はコンスタントに発表し続けているのだと思うが。

 小川洋子は、その出発時から「少女漫画のような」と形容される作品を書いてきたと思うが、「最果てアーケード」はそのものズバリ、マンガの原作だそうだ。もちろん、マンガとは異なる書き足しもあるかもしれない。マンガ化された作品は、私は見ていないので、比較はできない。
 そういうことは置いておいて、やはりマンガ的、いや、彼女の描く世界がマンガにぴったり合っているようなところは感じられた。
 この人の書くものは、どこか生々しさを欠いている。醜さ、と言ってもいい。
 小川作品とは関係ないが、アニメのお年寄りはみんな可愛いという話がある。実際のお年寄りが可愛くない、と言っているのではない。アニメでもしわは描かれ、姿勢が前傾していたりはする。それでもアニメのお年寄りは可愛い。
 小川洋子の描く人物にも、どこかそういうところがある。
 たとえば、剥げかけたマニキュアをつけた、子細にみれば古びた服を着た「兎夫人」は近くで見れば不気味にもあわれにも感じられるかもしれない。しかし、作者はその不気味さを強調したりはしない。むしろ、かわいそうな人に見える。
「死」が描かれることがあっても、葬式やそれに伴ういざこざや、手間のかかることは描かれない。
 火事で亡くなる人があっても、人の焦げた臭いがした、などとは絶対に書かない。
 そのへんが、小川洋子作品の「生々しさの欠如」であり、もしかしたらもの足りない思いをする人もいるのかもしれないが、逆に作品に童話的と言っていい雰囲気を与えているのも確かだと思う。


この記事へのトラックバックURL

 

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1479