2016年01月24日

「動物園の王子」を読んで

 以下の文章では、小説「動物園の王子」(中沢けい)の内容に触れています。ご了承ください。

 五〇代らしい女性三人(かつての高校の演劇部仲間)が、唯一職業としての俳優になった先輩の舞台を久しぶりに三人で見に行った後、その先輩が急に亡くなったこともあって、何度か会うようになる。
 と言っても、三人が会って話している場面よりも、一人ひとりの生活ぶりを描く部分のほうが長い。
 読みやすい小説だが、言葉の使い方にはこだわっている。言葉によって彼女たちの世代が見えるようでもある。
 旦那に「センチになるな」と言われて、センチなんて単語を聞くのは久しぶりと思ったり。
 五〇代になってからの時間は「みんなで作ったお釣りの時間」「ひらひらしないともったいない」と言ったり。
 三人の女性は常にユキさん、サッチン、チョウ子さんと書かれ、フルネームはついにわからない。それはこの三人がいつまでもどこか演劇部三人娘だった頃から変わっていないことを示しているのかもしれない。
 子どもたち世代とは微妙に考えの表し方がズレる。自分の健康状態もそろそろ心配にもなってくる。そんな中でも「夏の日暮れみたいなもの」、まだまだこれから、という考え方を示しているのは気持ちがいい。


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