2015年12月11日

エッグ

 以下の文章では、劇「エッグ」の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 NHKのプレミアムステージ枠で放映されていたのを見た。野田秀樹作・演出。

 エッグという名の競技。卵を壊さないようにしながら穴を開けて運ぶ競技だとか(競技そのものは一度も見せない)。それが東京オリンピックに採用されるか、どうか。でもこの話、今度のオリンピックなの? 1964年の? などと脱線し、実は1940年の開かれなかった東京オリンピックのことで、話の舞台は満州という設定になっていく。

 ワクチン開発のためにせっせと卵に穴を開け菌を植え付けた若い医者たち。そこからエッグという競技が生まれた。しかし敗戦の色が濃くなると、人体実験をしていたことを隠すため、ひとりに責任を押しつけ彼が自殺したことにして、みな満州から逃げてゆく。
 青森の農家の三男坊で最強のエッガー、そして自殺させられる主人公に妻夫木聡。彼と結婚する歌手が深津絵里。映像だと薄化粧でナチュラル派という顔の深津がつけまつ毛をバシバシ付けて、でも眉は薄く、ハイヒールで動き回り、細い体で歌う。その病的な感じがよく似合っている。
 スポーツと戦争を重ねたのは、もちろんその熱狂的な点がよく似ているからと言いたいのだろう。無垢というよりはおバカな感じで現れる主人公は利用されるのに適当だ。
 俳優さんを集め、音楽は椎名林檎。野田自身が、案内役として作者としてしばしば登場する。これで商業として成り立たせているのなら、たいした手腕だと思う。妻夫木と仲村トオルの上半身裸を見せるなどのサービスも怠らない。
 満州の話へ持っていくのがやや強引な感じがするが、もちろんそここそを描きたかったのだろう。一気に駆け抜け、お涙ちょうだいにはしないとばかりに、乾いた調子は崩さない。ただ、こういう劇だと観客にはあまりカタルシスが感じられないような気がする。


この記事へのトラックバックURL

 

QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。 解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
mc1479