2015年09月28日

本『あなたの本当の人生は』

 以下の文章では大島真寿美の『あなたの本当の人生は』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 大島真寿美の作。『いつか目覚めない朝が来る』では、もと大女優を取り巻く人々を描いた作者。ここではもとベストセラー作家(今はもう書いていない)をめぐる人々を描く。
 作家のペンネームは森和木ホリー。その弟子(というよりお手伝い?)として住み込むことになった國崎真実。以前からホリーさんのところに通っている秘書の宇城圭子は、市民会館の事務員だったがホリーさんにスカウトされ、スケジュール管理や契約書の整理や電話の応対などをこなしている。最近では、ホリーさんの書くはずのエッセイを(本人が書かないものだから)宇城が書いている。ホリーさんのファンでもある國崎はそれを聞いて怒るが、「あなたもそうなるわよ」と言われる……
 では、ゴーストライターの話なのかというと、そうではない。
「どのように書き始めて、書くようになるのか、書き続けるか」についての話なのだと思った。結局、宇城はホリーさんの死後、ホリーさんについてのエッセイを書き続けていくことになる。國崎はホリーさんや訪れる人にふるまうコロッケを作っているうちに、お惣菜屋を開くことになり、書くことからは遠ざかっていく。
「書く」ことがどんなふうに始まり、どうやって終わっていくのか、なんて定義づけることはできないけれど、こんな例もあるのじゃない?とちょっとだけ見せてくれたような話。


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