2015年09月28日

『仮面/ペルソナ』

 以下の文章では、映画『仮面/ペルソナ』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 題名だけは聞いていたけれど見たことのなかった映画、というのはあって、これもそのひとつだった。イングマル・ベルイマン監督作品。
 冒頭を見てまず、こんな実験的と言っていいような映像から始まっていたのかと思った。目のアップ。起きる少年。少年の触れる壁にぼんやり映る大きな顔。
『エレクトラ』出演中に言葉を発せなくなった女優のエリーサベットと彼女の世話をする看護師のアルマ。心身に異常が見られないため、病院ではなく院長の別荘で二人は生活することになる。院長は、女優であるエリーサベットが「本当の自分になりたい」「自分をさらけ出したい」と考えて、言葉を発すれば「演技」と見なされるので、それをしなくなったのだろうと考えている。アルマは有名女優の世話をすることを素直に喜び、話さぬエリーサベットに代わるように話し続ける。自分の体験をエリーサベットに聞かせる。
 そうするうちにアルマはむしろ、話さぬエリーサベットに自分のほうが取り込まれていくように感じる。訪れたエリーサベットの夫(目が悪い)は、アルマをエリーサベットと思い込む。
 アルマがエリーサベットに向かい「あなたのようにはならない」と言って、二人は別荘を引き上げる……と書いたが、映画の印象はもっと曖昧で、実はもうアルマの中にエリーサベットは分かち難く存在しているのではないかという気もするし(二人の顔を半分ずつ合成してひとつの顔にしている場面がある)、エリーサベットがこれからどうなっていくのかもわからない。
 ただ、白黒のシャープな画面で、ときに刺激的な映像やセリフを入れながら、何となく私たちがあると信じている「個性」や「人格」に揺さぶりをかけたかったのだろうな、と感じた。


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