2015年07月08日

キューブリックの旧作

 以下の文章では、映画『非情の罠』『現金に体を張れ』の内容に触れています。ご了承ください。

 スタンリー・キューブリック監督の古い映画を放映していたので、見た。1955、1956年の映画。キューブリック作品というと、大作(上映時間も長い)というイメージがあるが、この2作は2時間もなく、モノクロ。どちらも犯罪映画。

 撮影にはこだわりが感じられる。『非情の罠』の主人公は、大事な試合に負けたボクサー。そのボクシングの試合は、さまざまな角度から執拗に映される。ビルの屋上での追っかけや、マネキン人形のたくさん置かれた倉庫内での闘いは見どころになっている。もやにかすむ高層ビルはゴシック建築のようにも見える。
『現金に体を張れ』は、競馬場から金を盗むという完璧に見えた計画が、情報がもれたこと等によって崩れていく様子を描いている。同じ時間帯の出来事が、別の人物から見た形で再構成されたりする描き方が面白い。ひとりだけは逃げおおせるのかと思ったら、飛び立つ寸前の空港での逆転。
 どちらも、犯罪ものの持つ、ヒリヒリするような感覚があって、鍵になる女(運命の女なのか、裏切る女なのか)も印象的。
『非情の罠』の中に「幸福で金が買えるか」というセリフがあって、面白いと思った。逆(「お金で幸福が買えるか」)は聞くけれども、こういう言い方もあるのか、と。
 おそらくこういう犯罪映画だけ作っていても、キューブリックにはそれなりのマニアックなファンはついたのではないか。スタイリッシュで驚かせるような場面もあって。しかし、やはり「世界の映画作家」と言われるようになるためには、もっと独特の、他には見られないような映画の誕生を待つしかなかったのだろうという気もした。


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