2015年06月08日

『サンドラの週末』

 以下の文章では、映画『サンドラの週末』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 ダルデンヌ兄弟の作る映画には、いつも「こういう切り口があったか」と感心させられるのだが、今回もそうだ。
 体調不良から仕事を休職していたサンドラが、ようやく復帰できることになる。ところが、会社から電話。ボーナス支給のために一人解雇しなくてはならず、サンドラを解雇する、というのだ。同僚の一人は「あなたを復帰させるか、ボーナスか」という投票が行われ、主任が圧力をかけたと言う。家のローンがあり、子どもが二人いるサンドラは、「君の働きがないと困る」と言う夫にも励まされ、週末に同僚のところを回る。月曜日の再投票を取り付けたので、自分に投票してほしい、と頼むために。
 同僚の復帰か、ボーナスか。シビアな選択だが、起こり得ることだと思う。「サンドラがいなくてもやっていけることがわかった」「いや、残業が増えると困る」「でも残業代がもらえる」どれも本音だろう。
「君に投票する」と言ってくれるのは、かつて仕事上で助けられた人。主任に脅されたり強制されるのは嫌だから味方する、と言う人。一方で、どうしてもボーナスが欲しいから居留守を使って会わない人もいる。
「物乞いみたい」と渋るサンドラを励まし、手伝う夫は偉い。もしかすると、ダルデンヌ兄弟が創造した中で一番イイ男ではないだろうか。
 結果は、サンドラが言うように「善戦した」とだけ書いておこう。後味は悪くない。


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