2014年07月15日

『her 世界でひとつの彼女』

 以下の文章では、映画『her 世界でひとつの彼女』の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 少しだけ未来の話。妻と別居している男セオドアは、人工知能OSを購入する。簡単な質問があり、女の声を選ぶと「サマンサ」という名前のそれは起動する。最初は仕事のアシスタント。パソコンにたまった資料の整理や、メールの仕分けなど。しかし人工知能は膨大な情報を取り込み、セオドアとの会話から人間らしさをも学び、どんどん成長していく。何しろ、サマンサには眠る必要がないのだ。
 サマンサはあくまでも「声」だけの存在だが、机の前でもベッドの中でも電源を入れてイヤホンをつければ、すぐに触れられる。彼女の目の役割をしているレンズを胸ポケットからのぞかせて海岸を歩くセオドアはデートを楽しむ気分だ。サマンサは彼を慰め、励まし、セオドアは離婚に踏み切る。
 しかしサマンサの成長は止まらない。彼女が自分以外の相手とも会話を交わし、恋人も600人以上いると答えたとき、セオドアはがっかりする。さらに成長したいサマンサは、セオドアに別れを告げる。
 これも一種の「ピグマリオン」物語なのだろうか。
 花売り娘を貴婦人に仕立てた教授が見放されるように、自分に最適化したOSだと思っていたサマンサに、セオドアは去られてしまう。おとぎ話と呼ぶにはリアルな話。


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