2018年10月07日

乱反射(ドラマ)

 以下の文章ではドラマ『乱反射』の内容に触れています。ご了承ください。

 面白かった。もちろん、笑えるという意味ではなく、ストーリーや構成が巧み、という意味で。

 夫婦がひとり息子を事故で失う。強風で街路樹が倒れたのだ。しかしそれは事故なのか。街路樹の管理責任は?
 管理は市の道路管理課だが、樹木の診断は業者に委託してある。もうすぐ道路拡張のため伐採される予定の街路樹だが、樹木医による診断は行われた…はずだった。
 伐採に反対する市民(おもにおばさん)の運動、樹木の根もとにふんを放置したまま、いつもそこに犬を散歩に連れてくる老男性、ふんの処理まで市役所の公務員がやるべきか、と憤る係。
 事故が起こった後も、夕方から夜にかけてだったため、バイト医〈内科)は救急車の受け入れを断り、他の病院でも断られ二時間後に受け入れられた時には子供は死んでいた。
 夫婦の怒りはやり場がない。というよりもぐるぐる回っていく。あの日、夫の父が病院で回復して、義母に誘われるまま、妻は早めの夕食を共にした。それを食べていなければ(もっと風の強くない時に帰れれば)。樹木医を伐採の調査に来たと間違えたおばさんたちに邪魔されなければ。
 とまあ、いろいろな「もし~だったら」があるのだが、現実にも何か取り返しのつかないことが起こるのはきっと、こういう少しずつの「まずいこと」の積み重なった結果だろうという思わせる。そこが巧い。
 樹木の根もとにふんを放置していく老男性は、実は主人公夫婦と話の始まりの部分で遭遇している。妻のほうが挨拶するのだが、男性は答えもしない。妻はその後ろ姿を見ながら夫に「無視されちゃった。それに手ぶら。ふんの始末とか、しないのかしら」と言う。夫は「そういう時代なんだよ」と答えている。
 老男性の言い訳は「腰が痛いんだから仕方ない」つまりしゃがめないらしいのだが、その家の描写を見るとる妻もいる。妻も運動のため犬の散歩に一緒にいったらいいのに、と少し思った。この妻が足が悪い設定だったら一緒に行けないことがわかるが。しかしそこまでやるとやり過ぎであざとくなるのか、妻は普通に歩いていたし、夫より若そうだった。
 さて、主人公夫婦も旅行に出る時に「明日の朝、ゴミを出せないから」と車のトランクに積んできてパーキングエリアの「家庭ごみを持ち込むな」と書いてあるゴミ箱に突っ込んでいく。しかも、それはラストでも繰り返される。
 それを皮肉を強く描くのではなく、痛烈でもなく、かといって人間を温かく見るというのでもなく、少し離れたところから淡々と見ているような描写が巧みだと思った。  

Posted by mc1479 at 07:24Comments(0)TrackBack(0)
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