2016年09月22日

荒馬と女

以下の文章では、映画『荒馬と女』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 クラーク・ゲーブルとマリリン・モンローの遺作。タイトルは知っていたが、初めて見た。モンローだけは衣装とメイクが別の人で、そういうのを見ると昔のスター女優さんだなぁと思う。もちろん、現在でも、そういう自分専用のスタッフの付く俳優さんはいるけれど。

 さて、そう思って見ると、モンローだけ衣装が異色。街から出かけた女だから、と言ってしまえばそうかもしれないが、乗馬シーンや野生馬を捕まえに行く場面ではさすがに白シャツにジーンズだが、それ以外は基本的にワンピースにヒール靴。男たちはカウボーイ風が多いから、余計に目立つ。
 離婚直後の彼女にまず目をつけたのは、中古車を買い取りに来た、何でも屋みたいな男。その知り合いがゲーブルで、こちらは完全にカウボーイスタイル。ロデオに行く時出会うモンゴメリー・クリフトもカウボーイ。
 さて、そのロデオを見に行く場面で、一番モンローの服装が目立つ。場をわきまえていない、と言いたいくらい。白地にさくらんぼ模様のワンピースで(襟元も背中もかなり開いている)、白い毛皮のショールまで持っていく。しかし、この肌見せと毛皮は、彼女を野生の動物に近づけて見せているような気がしなくもない。となると、周りの男たちにとって、彼女は捕まえるのが難しいけれどぜひ捕まえてみたい、と思わせる存在だと強調しているのがこの衣装ということになるのだろう。
 そう考えると、野生馬を捕えについていったのに、殺さないでほしいとわめく彼女は、男たちの気も知らずワガママを言っているというよりも、自分に近いものたちを傷つけられるのが嫌だという本能から叫んでいるのかもしれない。
 老カウボーイは逃がされようとした馬をいったん自力で押さえつけたあと、逃がしてやる。逃がすにしても自分で決めたかったと言う。それが彼の誇りなのだろう。
 その代わり、と言っては何だが、彼女が彼についてくる。しかし、彼女を捕まえることや放すことは、もちろんカウボーイの意思だけでできることではない。彼女自身は、今は彼と一緒にいることを望んでいるように見えるが、はたしてどうだろうか。いったん彼女を「野生動物に近い存在」と見てしまうと、ふたりの行く先は予想できない。  

Posted by mc1479 at 13:31Comments(0)TrackBack(0)
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