2016年04月25日

「あさが来た」スピンオフ

 以下の文章では「あさが来た」スピンオフドラマの内容に触れています。ご了承ください。

 朝ドラをまともに見てこなかったので知らなかったのだが、最近の朝ドラは本編放映が終わってしばらくするとスピンオフが放映される、という慣習ができているらしい。
 本編撮影が終わってから撮影されることもあるようだが、「あさが来た」の場合は、最終週の撮影と重なるような撮影時期だったようだ。脚本は、本編と違い三谷昌登さん。本編担当の大森美香さんが脚本監修。演出は、本編のチーフ演出だった西谷真一さん。

 加野屋がいよいよ加野銀行を始める準備をしている頃、亀助はふゆと結婚して九州へ行っていたが、京都へ一時戻って来ていた。ふゆと結婚したものの、ふゆの父に許しを得ていないことがいまだに気になっている亀助は、この機会に、美和の経営するレストラン「晴花亭」で、ふゆの父に挨拶したいと思い、連絡した。
 しかし会う前に心配になり、雁助に練習相手をしてくれと頼む。晴花亭には美和の先輩にあたるサツキが来ていて、夫についての愚痴をこぼしていた。そのサツキが亀助の話を聞いて参加して……とまあ、想像できるようなドタバタが展開する。ふゆの父は本編では少し登場しただけだが強烈な印象を残す人だったので、ここでまた出てくるのも、どんなことになるのかと期待させる。本編のメインの登場人物たちは忙しいので、サツキという新キャラクターを出して、ドタバタに加勢させるのもいいアイディアだと思う。
  やり取りにも、単に面白いだけでない「なるほど」と思わせるところがあった。亀助は最初練習する時には、ひたすら「すんまへん」と言うのだが、サツキのアドバイスもあって、「おおきに」と言うことにする。ふゆのお父さんに「わざわざ来てもろて、おおきに」ふゆさんを育ててもろて「おおきに」。そのほうが相手も感じよく受け取れるのではないか。もちろん、話の展開上、亀助が慌てるような事態になって思わず「すんまへん」と言ってしまい、「すんまへん言うたな。悪いと思うこと、したんやな」と突っ込まれる場面もあるのだが、落ち着いた時にやっと亀助の言う「おおきに」で、ふゆの父の気持ちも収まることになる。
 思い出してみれば、あさが祝言の日に加野屋に来た時、亀助が言ったのが「すんまへん」だった(新郎の新次郎が祝言を忘れて出かけていたので)。
 そして、新次郎が亡くなる前に集まった皆に言ったのが「おおきに」だった。
 そう思えば、あさの新次郎との生活は「すんまへんとおおきにの間」にあったわけで、このスピンオフのキーになる言葉に、それらを持ってきたのは本編のツボを押さえた作り方だったと言えるだろう。
 そして、亀助の危機!? と晴花亭にやって来る加野屋のメンバー、栄三郎、よの、かのたち。帰ってきたら皆がいないので、やはり晴花亭に来る、あさと新次郎たち。
 もと芸妓のサツキから「お久しぶりです」と言われて新次郎が慌てるのも、ヤキモチを焼く表情をするあさの頬を新次郎がつまむのも、お約束とは言え、微笑ましい。
 最終回まで見て、よのが亡くなり、かのが去り、新次郎の亡くなるまでを見た後でこれを見ると、若々しい加野屋メンバーが、ふゆのお父さんや亀助を囲んで乾杯する様子を見るだけでしんみりする。亀助と雁助のやり取りが好きだった人には、たっぷり聞けて満足だろう。もうひとりの放っておかれキャラだった、最初にふゆと結婚したいと言ってきた洋傘屋さんも意外にいいところを見せて、うまくまとめている。
 もちろん、もっと違うメンバーのその後を見たかったという人には不満もあるかもしれないが、スピンオフはスピンオフ。本編のちょっと変わったカーテンコールと思って楽しんだ。  

Posted by mc1479 at 13:00Comments(0)TrackBack(0)
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