2014年12月16日

「そして父になる」感想

 映画公開時に話題になった作品。ケーブルTVで放映されたので、見た。
 以下の文章では「そして父になる」の内容に触れています。ご了承ください。


 思ったよりも、福山雅治というスターの主演映画だった。
「子供の取り違え」という事件は、どう展開していくのだろうと興味をそそるし、二組の家族と住居が対照的に設定されているのもドラマを盛り上げる。本物の息子を初めてお互いの家に泊まらせることになった日の夕飯がすき焼きとギョーザであったり、二家族が一緒に写真を撮る時のカメラに明らかに差があったり。
 仕事に忙しいエリートの野々宮と、街の電器店のオヤジの斎木。野々宮の仕事は壮大で重要でもそれを息子に示してやることはできず、斎木は壊れたおもちゃを直すことで子供たちを喜ばせることができる。しかも、斎木夫妻を必ずしも良い点ばかりの両親として描くわけではなく、病院側からいくら慰謝料が取れるだろうと考えているとか、子供の小さな傷くらいは放っておく、というところも描いている。
 細かいところまで目を行き届かせているな、と思うのは、たとえば自分ではめったに子供と遊んでやらない野々宮が。住宅地の模型には家族の人形を置いて温かみを出そうとする場面などだ。
 尾野真千子が演じる妻に共感しやすいので、このまま万遍なく二家族を描いてくれたらいいのに、と思うが、後半はまさしく野々宮=福山の主演になっていく。離婚した父と再婚相手の義母が今も許せないこと。いろいろな父親がいるから、と息子と直接触れ合う時間は少なかったが、その考えが揺らぎ始めていること。ほぼ笑顔を封印した固い表情が、この役には合っている。そのくせ、ただ一度、本当の息子と銃を撃ち合う真似をしてふざけて見せる時には満面の笑みで、しかもギターを銃のように構えて、ミュージシャン・福山のファンである人を喜ばせているかのようだ。
 子供たちの自然な演技を引き出すことにかけては是枝監督は今回も巧みで、季節の移ろいの中でとらえられた登場人物たちの変化にも無理を感じさせない。でもやっぱり、いい場面をあっさりとさらっていく主役の彼はスターなのだなぁと思うわけだ。
 もっとも、この地味そうな映画のヒットには彼が大きく貢献しているのだろうから、それはそれで良いのだけれど。  

Posted by mc1479 at 13:26Comments(0)TrackBack(0)
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