2014年06月06日

『グッド・バイ」

 以下の文章ではNHK-BSの「プレミアムステージ」で放映された『グッド・バイ』の内容・結末に触れています。ご了承ください。


 太宰治の『グッド・バイ』をもとにした劇だという。脚本は北村想。
 はて、太宰の『グッド・バイ』はどんな話だったっけ、と確認してみる。愛人(多数)と手を切りたいと考えた男が「すごい美人」を雇う。その美人を連れて愛人の所を訪れ、「この人と結婚することになったから(君とは別れる)」と言うわけだ。愛人がそれで泣いて別れるくらいだから、すごい美人なのだが、大食である。ケチらずにご馳走しなさいよ、とも言う。ずうずうしいのだ。未完の小説。
 劇のほうでは主人公の男は大学教授に設定されていて、その助手の男が「教授が秘書を募集しています」という形にして女性を集める。仕組んだ上で、みごと採用された女性は助手の恋人。「この仕事がうまくいったら僕も助教になれるから結婚しよう」と助手に言い含められている。
 しかし、どうやらこの女性は、教授と一緒に女たちの所を回るうちに教授に心惹かれてゆく。そして、どうしても彼女たちが「愛人」だというのが信じられなくなり、話を聞いて実は教授が彼女たちを援助していたのだと知る。
 優しいじゃないか、と思う。8人も愛人がいてね、と豪語している教授は今も亡き妻の思い出に生きていて、その妻を忘れるために愛人をたくさん作った、というふりをしていた。秘書になる美人は河内弁をしゃべり酒に強いが、実は教授の純な姿にキュンとくるわけだ。助手も根っからの悪人ではなさそう。
 そういう優しいおとぎ話として解釈してみました、ということだろう。もちろん太宰の作品が未完である以上、その後をどう展開するかは劇作家しだい。でも、大食で欲張りですごい美人、というのもなかなかよろしいじゃないかと思っていた身には少々物足りないかもしれない。  

Posted by mc1479 at 14:40Comments(0)TrackBack(0)
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