2014年05月06日

『曹操暗殺 三国志外伝』感想

 まず、センチュリーシネマ様、あの大きなスクリーンで上映してくださって、ありがとうございます。 東京等の噂を聞く限り、こんな大きなスクリーンで見ることのできた名古屋は幸せだと思います。

 以下の文章では、映画『曹操暗殺 三国志外伝』の内容に触れています。また、登場人物の「霊ショ」の「ショ」の漢字が出せなかったのでカタカナ表記になっています。当方 玉木ファンなので、そういう目線の感想です。ご了承ください。

 中国映画の『銅雀台』が『曹操暗殺 三国志外伝』というタイトルでようやく日本公開された。2012年の秋に中国で公開された時は不幸な時期で、映画自体は中国ではヒットしたらしいのだが、日本との関係が悪くなっていた時だったので、中国映画に初出演した玉木宏の名前がポスターからは消される、という事態にもなったいわくつきの映画である。
 映画自体は、もちろん『三国志』を知っていればもっと楽しめるのかもしれないが、強大な権力を持った男の苦悩と、その権力者を狙う周囲の者たち、という大雑把な捉え方でも、十分見ることはできる。今回大きな画面で見て、あらためてセットの豪華さや衣装の質感を感じることができた。また、タイトル前の部分は色味を抑えた、ざらざらした感じの画面に作ってあって、『銅雀台』のタイトルが出た後は、画面が艶やかになるのもよくわかった。センチュリー1は画面が大きいので、手のアップになると「穆順のほうが指がきれい。霊ショ、指毛が生えてるよ」と思ってしまったのも事実。
 さて、玉木宏だが、訓練されている時の野性味溢れる穆順のぎらぎらした目も印象的だし、この場面の撮影だけでも大変だったろうな、と思うのだが、宦官になってからの穆順は別種の美しさ。霊ショとの密会シーンのアップを見ると、明らかに他のシーンの他の人たちとは照明の当て方が違うだろ!と言いたくなるのだが、一瞬でもあの白く美しい顔がスクリーンの縦一杯を使ったアップになると壮絶でもう半分くらいこの世のものでない感を漂わせている。少なくとも私にとっては、戦闘シーンよりも大画面で見るこのアップのほうがよほどスペクタクルだった。
 力もあるがその他のものもいろいろ身にまとってしまった曹操と、浮世離れした美しい(しかし暗殺の使命を帯びている)二人の恋人たち、という組み合わせだけで描いてくれてもいいのに、とも思うのだが、歴史ものである限り、そうも言っていられないのだろう。
 以前、中国映画は検閲があるから、殺人シーンや性的なシーンを描こうと思うと「歴史もの」にして「歴史上起こったことですから」と説明する、と聞いたことがあったけれど、今でもそうなのだろうか?だとすれば穆順と霊ショの話の部分はフィクションだと思うので、他にも歴史上の人物を登場させ、歴史的に知られていることを描かないとマズイだろう。そういう要素をどんどん取り入れていった結果、話がひと筋にうまくまとまっていない印象を与えているような気もする。
 霊ショの語りで始まって、ずっと彼女の目線で描かれていくのかと思ったら、途中からどんどん彼女の知りえないことまで入ってくる。ずっと「霊ショから見た話」に徹したほうがわかりやすかったのではないかと思うのだが、「歴史もの」ゆえ、なかなかそうもいかないのだろう。そんな中でこんなに穆順が美しいのは、やはり霊ショから見た描き方をされているからだろうと思って見ていた。
 この映画で玉木宏が演じた役は、役としては好きだ。それは『MW』で彼を好きになった私が勝手に「時の権力に身を委ねない男」というイメージを持っているからで、ここでの権力者に対する刺客という役にもそのイメージが重なるからだろう。あんなに小さい頃から訓練ばかりさせられて育ったら性格が歪むのでは、と感想を書いていた人もいたけれど、あの閉じられた世界で育ってきたからこそ、二人には互いしか見えなかったのだろうし、互いのいない世界は想像もできなかったのだろう。だから、あの設定は二人の純愛を説明する背景としては有効だと思う。この世で二人で、ということが叶わなければ、死を望むのも必然だとも言える。もちろん死を肯定するのは良い事とは思わないが、二人にとってそれが平和を得る道だったとすれば、無為な死、とは言えないだろう。
 幼ななじみだったとはいえ、閉ざされた世界で暮らす内に、霊ショにとって穆順は「夢」になったのだと思う。穆順だって外の世界で生きていれば、野心も権力欲も持つ男になっていたかもしれない。しかし穆順はそうはならなかった。霊ショは、最高の権力を持つ男の傍にいて、それでもそうではない男のほうが霊ショにとっては「夢」だった。と思えば穆順の浮世離れした美しさにも納得がいくのだ。夢の男はあくまでもこの世の泥に染まらずに消えていかなければならない。霊ショはその「夢」に殉じたのだ。

 最後にひとつ気づいた小さなこと。漢字とローマ字書きでスタッフ・キャスト名が出るタイトルで、音楽担当の梅林茂は「SHIGERU UMEBAYASHI」と名前が先に出る表記なのに、玉木宏は「TAMAKI HIROSHI」なのだった。  

Posted by mc1479 at 15:43Comments(0)TrackBack(0)
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