2014年03月01日

『マイ バック ページ』

以下の文章では、映画『マイ・バック・ページ』の内容に触れています。ご了承ください。

 見終わって、もやもやした。私はこれを日本映画専門チャンネルの「日曜邦画劇場」で見たので、前後に解説というか感想が付いている。その中の「梅山に対する沢田の共感と幻滅、そしてクライマックスの涙は、当時の若者たちの学生運動に対するナイーヴな期待と挫折感を残酷なほどに描き出していたように思います」という言葉で言い尽くされているような気もする。もっと痛烈に「ジャーナリストというのは、この程度のものだ。自分と感性が似ている(ように見える)人間なら信じてしまうのだ」と見た人もいるようだ。
 実話に基づいていて、背景となる時代は1969年~1972年。主人公の雑誌記者・沢田は学生運動を取材するうちに知り合った―というよりむしろ向こうから近づいてきた梅山に何度か会い、独占スクープを取ろうとする。梅山たちが実行したのは自衛隊基地から武器を盗み出すことだが、肝心の武器は入手できず、自衛隊員一人を殺す結果になる。沢田も罪に問われ、実刑判決を受ける。
 梅山たちの「権力側はデモ隊に暴力をふるい、殺しさえする。こちらもまず武装すべきだ」という意見はもっともなようにも聞こえる。沢田もそれを全面的に信じていたわけではないだろうが、梅山に対して友情めいたものを感じていたように見える。沢田を演じる妻夫木聡がいかにも人がよさそうで、梅山を演じる松山ケンイチがうさんくさそうなのはイメージ通りの配役にも見え、そういう意味では冒険的ではない。
 なぜ今、この話を映画にしたのかという疑問は残るのだが、私にとって印象的だったのは、沢田が表紙モデルの女の子と映画を見に行った後の場面だ。ジャック・ニコルソンが泣くところが好き、と言う女の子に対して沢田は「泣く男なんて男じゃないよ」と言うのだが、女の子は「きちんと泣ける男の人が好き」と言う。その意味では、これは沢田が「きちんと泣けるようになるまで」の話なのだ。そしてその泣き始め、泣いていく表情をじっくり映してもらえた妻夫木は、役者として恵まれていると言えるのだろう。  

Posted by mc1479 at 13:17Comments(0)TrackBack(0)
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