2014年02月09日

『私の嫌いな探偵』感想その①

「感想その①」としたのは、たぶんまた「感想その②」も書くだろうと思ったからです。以下の文章では、ドラマ『私の嫌いな探偵』の内容に触れています。ご了承ください。

 楽しんで見ている。玉木宏さん、好きだから。特に第1話では「まだ、こんなに見せたことのない表情・動作があったんだ、この人!」と思わせてくれて、大いに笑わせてもらった。
 第4話まで見てきて、あ、やっぱり原作とは別物なんだということを改めて認識した。
 第1話でわからなかったのかい、と言われれば、まあ、第1話は原作とは違う設定をかなり強引に納得させなければいけないし、それぞれの人物像(これも原作とはかなり違う)を印象づけなければいけないし、ね……、と思っていたのだが。
 第3話、第4話と短編が原作のものが続いて1話完結型になり(第1・2話は連続していた)、手頃な長さだけに1時間枠のドラマに仕立ててもそのまま原作が生かされるセリフもあり、そうなってくると余計に「あ、原作とは別物なんだ」という印象が強くなってきたという次第。

 第4話は「死に至る全力疾走の謎」。原作からほぼそのまま使われているセリフとして、次のようなものがある。
①(謎の全力疾走によって壁に激突し、入院した男に向かって)
「それを知りたいと思いますよね。知りたいはずだ。知りたくないはずがない。知りたくないなんてことはないはずですよね」というセリフ。
②(その男について後で)
「ああいうふうに《探偵》という言葉に敏感に反応するのは《スネに傷もつ悪い奴》、もしくは《ミステリマニア》、あるいは《スネに傷もつミステリマニア》。この三種類の中のどれかに違いない」
 ちなみに、セリフ①は原作では鵜飼探偵のセリフ、ドラマでは大家さん朱美のセリフ。原作の鵜飼のうっとうしい部分はかなり朱美に移行されていて、だから朱美のセリフになっているのだろう。
 セリフ②は原作でもドラマでも鵜飼のセリフ。原作の中で読んだ時のほうが面白かった。当たり前だが、基本的に原作は言葉の面白さでユーモアを誘っているからだろう。だから、異なる人物による同語反復、ダジャレ、言葉の区切り方による面白さ(鵜飼は「烏賊川市医科大学附属病院」を「いかがわしいか、だいがくふぞくびょーいん」と読んで面白がる)などで笑わせる。そういう流れの中で読むほうが言葉の面白さは感じやすいのかもしれない。
 一方、ドラマのほうは動きの面白さで笑わせている面がかなりあると思う。特に第1話での鵜飼探偵の動作(上着を広げてあ~はっはっはと笑う、じゃがいもを丸ごと箸ではさんでかじろうとする、など)は楽しませてもらった。その後も砂川警部のジェスチャーのような人物の動きや、神社の長い長い階段のようなロケ地を生かした情景など、見た目の楽しさは大きいと思う。
 
 ただ第4回で気づいたのは、第4回は結構「謎解きの面白さ」だったな、ということ。そして謎解きが長い! 
 いや、長くていいのだ。その間、あのいい声を聞いていられるのだから。間に再現シーンややりとりも挟まれるとはいえ、ほぼ10分間にわたる謎解きのシーン。これだけの時間を語ってくれて嬉しいのはあの声ならではですよ。

 原作と変えたことによって、ちょっと残念なこともある。第4話はうまくまとまっていたとは思うんだけど、原作ではこれは朱美のビルの向かいのビルで起きた殺人。向かいの、つまり、いつも見ている部屋だったから、鵜飼は「ずっと電気がついていて、おかしい」と気づいて中にある死体の発見につながるわけ。それを探偵事務所とは離れたビルにしたので「ずっと布団が干してあるからおかしい」ということになったわけだが、そもそも殺人が行われたのが夜の9時。その時刻まで布団を干しておくこと自体、変ではないか?
 というわけで、これは設定を変えたために起こった不都合だろう。それに原作では(たぶん)金目当ての殺人だったのが、また情緒的殺人になっちゃった(また、と書いたのは今のところ全部そうだから)。実際は金目当ての殺人はかなりあり、そういう金目当ての殺人犯のほうがトリックを考えて実行するような気もするが…

 ただし、映像化されるからにはやっぱり「画として見る面白さ」は優先されるのかもしれない。『2001年宇宙の旅』以来すっかり有名になった『ツァラトゥストラはかく語りき』が鳴り響く中での殺人(ある意味正統的な使用法。『2001年宇宙の旅』でも殺害シーンがあったから)や「宇宙人に日本語がわかるんですか」と言っていると、最後にETらしい指が見えて「つづく」とちゃんと日本語を読んでいるなど映画ネタは面白いし、UFOが来ずに朝が来た場面での鶏の出方は絶妙。

というわけで、これからも楽しみにしたい。
あとひとつ。大家さんに「家賃を上げる」を脅し文句にされている鵜飼探偵ですが、そろそろ反撃してもいいのでは?
「大家さん、これ以上邪魔をすると、大家さんを椅子に縛りつけて動けなくして――私のダンスを見せますからね!」というのはどうでしょう? 「ダンスの下手なやつは許せない」大家さんにとっては、かなりの拷問だと思うが。
  

Posted by mc1479 at 09:43Comments(0)TrackBack(0)
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