2014年01月10日

『鈴木先生』

 連続ドラマは見ていない。映画になったものが放映されたのを見た。以下の文章では、この映画の内容に触れています。ご了承ください。

 冒頭、面白い!と思った。この映画の前段に当たるドラマは見ていないから、個々の生徒にどういう経歴があるのかは知らないけれど、そうか、鈴木先生って妄想男子がそのまま先生になったような人なのか?と勝手に解釈。
 いわゆる熱血教師ではなく、生徒たちに「立場に応じて演じることも大切」と教える鈴木先生には、好感が持てる。
 前半の、生徒会選挙をめぐるそれぞれの考えや文化祭に向けての準備は結構リアルに描かれている。鈴木先生が喫煙者で今や追いやられる立場になりつつあるというのも、公園の喫煙所にやってくる引きこもりがちの男たちとの接点を作っている。
 男たちは、鈴木先生の勤める中学の卒業生で、やがてその一人が学校に乗り込んで事件を起こすのだが…
 生徒会選挙が体育館で行われる時に教室に入り込み、そこに残っていた生徒を脅す。という設定には無理がないか? 東京の公立中学の生徒会選挙が一般的にどのように行われるのかは知らないが、体育館へ集合させ、選挙を始める前に(不正防止のためにも)欠席者以外の全員が揃うまで待たないのか?
 そういう細かい部分が気になる。
 この事件に関してはリアリズムで描こうとしていませんから、と言われたら、そうかもしれない。たとえば日本のドラマで警官がやたら発砲し始めたらそこから先はファンタジー、と考えたほうがいいように、この映画も部外者が校内に入り込んだ時点からはファンタジーと捉えるべきなのかも。
 そういえば、この事件の内容も男子の妄想しそうなことではある。自分の好きな女子をこういう状況に追い詰めてみたい、とか、それでもその女子はあくまでも清く気丈であってほしい、とか、追い詰められた時に自分を頼りにしてほしい、救ってみたい、とか……。隙を見て犯人(という言い方で良いのかな)を取り押さえる男性教員はちゃんといるのに、鈴木先生のほうに駆けつける教員が一人もいないのも、事件は実は鈴木先生の妄想だったから?と思ったが、そういうオチではなかった。
 何か惜しい。生徒会選挙での無効票や公園の喫煙所とからめながら「グレーゾーンを残すことの大切さ」を言う辺りは良いと思ったのに、クライマックスの事件はまったく「グレーゾーンを残すこと」で解決に導かれるようにはなっていないからだ。「グレーゾーンを奪ってしまうと、こんな事件を起こすんだよ」という描き方にしてしまっては、「じゃあ、グレーゾーンを好む人は最初から取り締まったほうがいい」と考える人が増えるのではないか。むしろ、グレーゾーンを消すことを目的にする人たちが事件を起こすという展開のほうが、そこまでの流れに沿っている気がするのだが…
 そのあたりがなんだか裏切られたような気がして、ちょっと後味が良くないのは残念。  

Posted by mc1479 at 11:47Comments(0)TrackBack(0)
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