2013年08月09日

ショートストーリーなごや(映画)

 この、ショートストーリー(3本立て)を見に行ったのは初めて。失礼ながらもっと素人っぽいものを想像していたので、普通の(映画館で公開される)映画であることにまず驚いた。

「過去を描いた伊藤さんの話」
 栄で風景画を描いている…ように見えながら、描かれた絵は昔の風景だった、という設定が魅力的。原作では、3・11のあと、その悲惨な光景と空襲後の栄を重ね合わせた伊藤さんが、やがてそこから抜け出して明るい現在の絵を描くところがクライマックスだろう。
 もちろん映像でもそういう展開はあるのだけれど、伊藤さんの描く過去を、原作よりも強く伊藤さんの妻の思い出と結び付けている。その分、破壊からまたそれを超えて…という点は弱くなったような気がする。
 過去の風景(写真)は、あまり大量に用いるより、焼け野原になったものを強調して使ったほうが印象に残るように思うのだが、どうだろうか。

「キスナナ the final」
 これは発想勝ち。ナナちゃんにキスをするというあり得ない話を見せてしまうんだから。それを阻止しようとする花屋のおじさんとの闘いも面白い。もっとも肝心のナナちゃんにどうやってよじ登ったのかはよくわからないのだが、ナナちゃんの肩にまたがって思いっきりキスをする映像だけで笑える。
 そして、原作にはない、驚きの最後。これを付け加えたことで原作を超えて、映画らしくなっている。

「矢田川のバッハ」
 原作では「軽いうつ病」であるとされているママが、ここではそういう言葉は使われないので、やや曖昧だが、9歳のボクとママの不安は伝わってくる。でも矢田川のほとりのコリアンダーは、プランターではなく地面に生い茂っていてほしかった。
 原作では「芽が出ない」ことになっていた、ママがべランダの鉢で育てようとしたコリアンダー。映画では、出てきた芽をボクが抜いてしまう。この時のボクには共感しにくかった。でも原作のように「過去のできごと」にはせず、この先に向かっていけるようなラストにしたのはいいと思う。  

Posted by mc1479 at 19:09Comments(0)TrackBack(0)
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