2013年08月06日

『青い鳥』

 正直言って、こういう映画があること自体知らなかった。NHKのBSで放映されたのを見た。重松清の原作も読んでいない。
 以下の文章では、映画『青い鳥』の内容・結末に触れています。ご了承ください。

 いじめによる自殺未遂のあった中学校。自殺未遂を起こした生徒・野口は転校してゆき、何事もなかったかのように始まる新学期。ただし、担任の先生が休職したため、臨時で、新しい村内先生(阿部寛)がやってくる。吃音という設定だが、わざとらしい演技でないのが、まず良かった。
 村内先生は、野口の机をもう一度教室に運び入れ、朝礼時に「野口くん、おはよう」と言う(毎回、この「野口くん、おはよう」の時には村内先生はスムーズにしゃべる)。何日かすると、反発する生徒も出てくる。もう終わったんじゃないのか、俺たちは反省したじゃないか、というわけだ。一方で「あの先生、一日でクラス全員の名前を覚えたよね」と好感を持つ生徒もいる。臨時でクラブの担当もないためか、村内先生は放課後になると、グラウンドで活動する生徒たちを見ている。
 学級委員の園部は、野口が遺書に3人の名前を挙げたというのが気になっていた。たぶん学級内で力の強い井上、梅田、そして三人目は自分ではないのか。自分も調子に乗って同じことをしてしまったから、野口は「裏切られた」と思ったんじゃないか。
 村内先生は去る前の日に、「反省文を書き直したい人はそうしなさい。直さなくていいと思う人は自習」と告げる。野口が自殺未遂を起こしたあと、クラス全員が5枚以上の反省文を書いて、教員全員で見て書き直させ、完成させた経緯があるのだ。反省文を書き直そうとするのは、もちろん全員ではない。しかし何人かが書き始める…
 
 ドラマチックに盛り上げることを狙わず、淡々となるべくリアルに描こうとする姿勢のある映画だ。自殺未遂の生徒の親がマスコミに「遺書」を見せたというのも、クラス全員が誰に見られても困らない反省文を書いたというのも、校内に「相談したいことのある人はここへ入れてください」という青い鳥ポストを設置したというのも、いかにもありそうだ。
 そんな中にあって阿部寛だけが、ときどき異世界から来た人のように見えたりするが、まあ彼は実際にこの学校にとっては異端者なのだから、それでいいのかもしれない。学校に保管してあった「反省文」を焼く、というのは臨時教員としてはあり得ない行為だとは思うが…
 しかし「反省」ではなく「責任」を、野口くんがここにいたことを、野口くんにしたことを忘れてはいけない、という「責任」を突きつける厳しさには見るべきものがあると思った。  

Posted by mc1479 at 14:54Comments(0)TrackBack(0)
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