2013年04月07日

ホテル マジェスティック 感想③

これが玉木宏 初舞台・初主演として良くできていると思う要素。

1 成長・変化する役である。
 役者なら誰だってそれは得意でしょう、と言われるかもしれない。
 が、玉木宏は成長して変化した姿をそれこそ劇的に、見える形で示してくれる。
 とりわけそれがよくわかるのは、第1幕。1場は、カメラ好きの素朴な青年。 2場になるとサイゴンへやってきたものの右も左もわからぬ新人カメラマン。3場でジャングルへ。ここでカメラマン澤田教一は自分の人生を決定づけてしまうことにもなる写真を撮る。そしてその後になる4場では登場した瞬間に既にベテランカメラマンの雰囲気。サングラスをかけて「戻りました」とホテルのロビーに入ってくる姿は、サイゴンへ来た時にびくびくしていた青年とは別人のよう。そういう変化を見られるという点で、まずおいしい。

2 苦悩する姿が見られる。
 自分が好きな俳優が苦悩する姿を見るのが好きな人は多いのではないだろうか。単純に言えばそれは見せ場だから。苦悩する姿に見る側は惹きつけられる。感情移入しやすい場面でもあり、見ている側にはその激しさに支配されたいいう思いもある。あるいは見ながら「気の毒に、でもその悩む姿がセクシー」と感じていたりする。
『ホテル マジェスティック』における澤田は第1幕では肉体的に苦しみ(緊張のあまり、胃痙攣を起こす)第2幕では、精神的な苦悩を口にする。自分がカメラをスコップで戦っている、と言う場面である。
 その苦悩の表現、声、涙に見る側は激しく惹きつけられる。

3 死ぬ。
 悲劇が人を惹きつけるのは、日常生活ではあり得ない死に方が存在するからではないだろうか。理想のためや愛のために死ぬなんて日々の生活では、まずない。
 実在の澤田の死とは違って、ここでの澤田は平和を希求する象徴のような死を遂げる。演技とわかっていてもそれはショッキングなものだ。おまけにその直前に、客席に降りてきた澤田は通路を走る。そういうことがあるのはこの場面だけで、躍動する身体を見せられた直後に、それが動かなくなるからこそショックも大きい。

4 モノローグ
 10分近い、モノローグ。これを任せたのはすごいと思うと同時に、たぶんこれがあるからこそ、玉木目当てで見に来た観客は満足できるのだと確信する。
 言っていることは素朴なのだが、それゆえに最大多数の心に響く。
 そういう場面をつくり出したのは巧い。
 そのモノローグの余韻を残したまま、観客は劇場を後にすることが出来る。  

Posted by mc1479 at 14:58Comments(0)TrackBack(0)
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