2012年05月18日

東京物語

 長い間、題名だけは聞いたことがあるのに、実際に見たことのない映画。私にとっては「東京物語」はそうだった。NHKのBSで放映されたデジタル・リマスター版でやっと見た。基本的にホームドラマ、そして明確な悪役は誰もいないところが純文学っぽい(明確な悪役がいたりするとエンターテインメントになると思う)。尾道から上京した老夫婦の長男も長女も時間がなくてろくに相手をしてやれないが、それは悪意があってやっているわけではない。次男の妻の言葉を借りれば「誰だって自分の生活が一番」なのだ。
 これが名作として残っている理由は多少わかった気がする。漂う哀感(名作と言われるものには、喜劇よりは悲劇のほうが多い)。美しさ(一枚の白黒写真にしてとっておきたいような美しい場面がある)。解釈の多様さを許すようなセリフ(これは主に原節子によって口にされる)。そして人生とはこのようなものだ、と感じさせるところ。
 義母との会話で「今はそうでも(再婚しなくて大丈夫と思っても)年とってくると淋しいよ」と言われた原節子が「いいんですの。私、年とらないことに決めておりますの」と答えるのはいいな~と思った。
  

Posted by mc1479 at 18:19Comments(0)TrackBack(0)
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